こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 先の投稿ではチャイコフスキーが音楽を担当した、いわゆる「三大バレエ」である「くるみ割り人形」、「白鳥の湖」、「眠れる森の美女」をご紹介しました。 今回はそれよりも少し前に作られた「コッペリア」についてお話いたします。 E.T.A.ホフマンの「砂男」をヒントに、振り付けのアルテュール・サン=レオンが、シャルル・ニュイッテルとともに台本を書き、音楽はレオ・ドリーブが担当しました。
お話の舞台はポーランドのある農村。 主人公のスワニルダはフランツと恋仲ですが、最近のフランツは偏屈な老人コッペリウスの家のベランダで本を読んでいるスワニルダが気になっている様子。そんなフランツを見て、スワニルダは気が気ではありません。 ある日、コッペリウスの落とした鍵を拾ったスワニルダは、友人たちとこっそりコッペリウスの家に忍び込んでしまいます。 コッペリウスの家の中にはたくさんの人形が並んでいます。それらはコッペリウスが作った自動人形(オートマタ)で、あのコッペリアも実はその人形のひとつだったと分かり、喜ぶスワニルダ。 ちょうどその時、コッペリウスが帰宅し、スワニルダたちを見つけて大騒ぎになります。友人たちは逃げましたが、逃げそびれたスワニルダはコッペリアをしまってある部屋に隠れることにしました。 コッペリアのことが気になっているフランツも、こっそりとコッペリウスの家に忍び込もうと、窓にはしごをかけてのぼってきました。 それを見たコッペリウスは「この男の魂を、人形のコッペリアに乗り移らせて、人間にしよう!」と思い付き、フランツにお酒を飲ませて気を失わせてしまうのです。 フランツを助けるために、コッペリアになりすましたスワニルダは、まるで人形に魂が乗り移り、人間に生まれ変わったかのようなお芝居をします。 すっかり自分の試みが上手くいったと大喜びのコッペリウスですが、フランツが目覚め、コッペリアに扮したスワニルダとともにコッペリウスの家を後にする様を目の当たりにしてショックを受けてしまいました。 そして、スワニルダとフランツの結婚を祝う日。かんかんに怒ったコッペリウスがやって来ますが、心から謝る2人の様子と、市長のとりなしによって、コッペリウスは2人を許し、2人は皆から祝福してもらうのでした。 この作品についてはお話したいことがたくさんありすぎて、どこから始めれば良いのか迷ってしまうほどです。 「コッペリア」が生まれた1800年代は、イギリスで始まった産業革命がドイツをはじめとして広い地域に伝わって来た頃で、人々は今まで「不思議」と感じていたことを解明し、また手にした技術で何が出来るか、どこまで行けるか、前のめりになっていました。 その「不思議」の中には中世から続いていた「錬金術」を具体的に解明し、化学として形作ろうとしていましたし、当時流行していた「自動人形(オートマタ)」が様々な分野の人に影響を与えたりしていました。 もしかしたらそれは、人形に人間が魂を宿らせているように見せることで、創造主である神への挑戦をしていたのかもしれません。 また「コッペリア」に関わる人々は全て有名人! 原案「砂男」を書いたE.T.A.ホフマンは、バレエ「ホフマン物語」にも描かれている人物ですし、音楽を担当したレオ・ドリーブはコンクールなどでも踊られる「シルヴィア」を作曲しています。 振り付けのサン=レオンは、「パ・ド・カトル」の1人であるチェリートのパートナーとしても有名ですし、振り付け家としてはディベルティスマンやキャラクテール(民族舞踊)の部分でその力を大いに発揮しました。 (キャラクテールについては、音楽との関係も含めて、また別の記事でお伝えしますね!) バレエが好きな人はもちろん、歴史が好きな人にも楽しんでいただけるカラフルな作品ですから、この作品に触れる人は色々な面から調べたりしながら、取り組んでみてくださいね。 スクールでは、作品理解にも丁寧に時間をかけて取り組んでまいりますので、ただ踊れるだけではなく、学習も出来る人になれると思います。(木村)
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こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 前回の投稿でご紹介した、ミヒャエル・エンデの「モモ」には「灰色の男たち」という登場人物がいます。 彼らに名前はなく、大量生産された製品のように番号がついていて、その番号で「識別」されていて、彼らの命は人間たちから奪った「時間」で作った葉巻を吸うことで保たれています。(葉巻がなくなると生きていられないばかりか、その身体も煙のように消えてしまいます。) この「灰色の男たち」は人々から大切な「時間」を盗むために、様々な方法で心の隙間に入り込んできます。
特に影響を受けてしまったのは「大人たち」です。 「時間どろぼう」である「灰色の男たち」は、将来への不安や、お金儲けの話など、手をかえ、品をかえ、大人たちの心を揺さぶり、「いま、ここ」にある、たとえ多少貧しくても「心豊かな時間」を掠め取ろうとします。 そして「灰色の男たち」に言われた通りにあくせくと毎日を送る大人たちは、はじめのうちは自分たちのために良いと思われていた「システム」に、すでに自分たちがとらわれてしまい抜け出せなくなっていることに気付くのです。 一方で「いま、ここ」にある「心豊かな時間」の大切さを知っている子どもたちには、「システム」ではなく、「心豊かな時間」の中身をすかすかにするような「道具(おもちゃ)」を与えて、創造性や想像力を削りとりながら、「灰色の男たち」にとって扱いやすい存在に変えていきます。 「こんにちは、あたしビビ・ガールよ。」と決められたセリフを繰返ししゃべるこの人形は、子どもたちの遊びの可能性を狭め、だんだんと子どもたちの価値観までをも貧しいものにしてゆき、子どもたち自身もだんだんとロボットのように冷たい存在になってしまうのです。 モモがマイスター・ホラの家で体験した豊かな時間と対照的に、「灰色の男たち」が差し出してくるのは、便利かもしれないけれど、有能かもしれないけれど、本当の意味では相手に何も与えられない「冷たさ」です。 道具やシステム、ルールやメソッドは、人々を助け、支え、可能性をひろげ、(時間はかかるかもしれませんが)本当の意味での「心豊かな時間」に導く「手段」です。 私たちスクールの講師も、バレエのレッスンや発表会などを通して、子どもたちと本当の意味での「心豊かな時間」を共有出来る存在で在れたら、と思います。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 皆さんはミヒャエル・エンデという作家をご存じですか? 「ネバーエンディング・ストーリー」という映画をご覧になったことのある方の中には、そこから原作である長編の物語「果てしない物語」にたどり着いた方もいらっしゃるかと思います。 今回は「絵本」ではありませんが、この時代だからこそ必要な、大切なものがたくさんつまっているこの本をご紹介したいと思います。 主人公はどこからやって来たのか分からない、もじゃもじゃ頭の不思議な女の子・モモは、街の外れにある野外の円形劇場跡地の穴で暮らし始めます。
街の人たちは、はじめのうちはモモをどう扱うべきか、あれこれ考えますが、しばらくするとモモの存在は人々にとってなくてはならないものとなり、困ったことがあると「モモのところに行ってごらん!」と言うようになります。 モモには目に見えるようなすごい能力はありませんが、彼女が相手の「お話を聞く」だけで、その人の頭の中や、心の中は不思議と整理されて、また新たな一歩を踏み出すことが出来るのです。 そんなモモの不思議な力を快く思わない「灰色の男たち」は、モモの大切な人々を遠ざけて、彼女の力の及ばない世界を作り、世界中の人々から「時間」を奪おうとしますが、マイスター・ホラとカメのカシオペイアの助けを借りて、モモはとらわれた「時間」を解放し、人々を(たとえ生活は貧しくても)精神的に豊かな世界へとかえすことに成功するのです。 この本の中には「人は気付かないだけで、それぞれの中に本当に求める答えを持っている」、「時間をかけて相手の話を聞くことの大切さ」、「効率ばかりを追い求めると物事の中身はすかすかになる」、「たったひとつの遊び方しかできないおもちゃは逆に創造性や想像力を奪う」、「人には、ひとりひとりの広さや深さや密度をもつ<時間>がある」…など、時代を超えて人々に響くメッセージがたくさん隠されています。 たくさんの道具や技術が発達し、私たちは便利な毎日が送れていますが、周りを見回して見ると、その「便利さ」にとらわれてしまって、逆にあくせくと毎日を送っている人がいることに気付くかもしれません。 どれだけ便利な道具があっても、技術を手にしても、それを手にする私たちが、思いやりやまごころや、深く豊かな気持ちを失ってしまっては、手段と目的が入れ替わってしまいますね。 命の保証があること、生活が安定していること、健康であること、など前提となるものはありますが、本当の豊かさや、ひとりひとりの「まこと」にむかって自身を磨き、深めていくことの大切さを、私たち講師はバレエを通じて子どもたちと共有していきたいと考えております。 哲学者でもあるエンデは、他にも児童文学を数多く執筆し、子どもたちへ、そして子どもたちを育む大人たちへのメッセージを発信していますから、ぜひ皆さんも読んでみてくださいね。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 先日、自分の担当する生徒さんたちが、外部の発表会に参加させていただくという、貴重な経験をしてまいりました。 木村は「<○○の踊り>で出演して欲しい」とリクエストをいただかない限りは、子どもたちに合わせたオリジナルの作品を出品することが多いのですが、今回は環境もメンバーも変わったばかりの状態で振り付けが始まり、はじめのうちは「間に合うのだろうか…」と、振り付けを渡す側のこちらがひやひやするほどでした。 3クラス合同の全体リハーサルは、前日に40分間行ったのみで、当日も場当たり(出入りや立ち位置を確認する作業)をして、1回だけ音楽で踊ってみて、あとはすぐに本番! 今回は、これまでのコロナの影響もあり、初舞台の生徒さんが大半でしたので、「上手(かみて)」や「下手(しもて)」などの舞台用語については(出来るだけレッスン中も使っていましたが)舞台に行くまでは、写真を見たり、想像するしかない状況でした。 そのような中で、講師である自分は様々な「万が一の事態」を想定しておりましたが、何事も無く出演者全員で作品をお届けすることが出来ました。 木村がレッスンや振り付けを通して伝えることのひとつに「始末をつける」があります。 始末という言葉にはいくつかの意味がありますが、「始末をつける」と形容動詞的に用いる場合には「物事の締めくくりをつけること。後片付けをすること。」という意味になります。 どんなに小さな子どもたちでも、一度舞台に出たからには、自分たちで踊り、自分たちでレヴェランス(お辞儀)をして、自分たちで舞台袖に帰って来なければなりません。 また大きな生徒さんは、技術的にチャレンジするものもあるかと思いますが、上手くいってもいかなくても、そこで立ち止まることなく「踊り」を「作品」として客席にお届け出来るよう、始末をつけなければなりません。 どの立場であっても、この「始末をつける」大切さや責任を感じることが出来た時、子どもたちの成長や立ち居振る舞い、物事の考え方や、課題への取り組み方は大きく向上します。 それは「ピルエット(回転)がどれだけ多く回れるか」よりも、まずは人間としての成長の面でとても大切なことですし、この成長を目の当たりに出来ることが、講師にとっても素晴らしい体験であることに間違いありません。 そして、この「始末をつける」責任を果たせるようになった生徒さんは、木村の経験上、必ず、自然と周りに目を配り、小さな生徒さんのお世話をしたり、思いやりの声をかけられる人になるのです。 その成長は、子どもたちの心身に不必要なテクニックを盛り込まなくても、年齢に相応しくない役柄を与えなくても、日々の丁寧なレッスンと、細やかなコミュニケーションと、音楽や作品への理解や共感を積み重ねていけば、自然と目に見える形となって、舞台の上に現れてくれます。
三田バレエスクールの発表会では、レッスンで積み重ねてきた子どもたちの頑張りを発表する会であるという考えのもと、それぞれのクラス、それぞれの生徒に適した課題に取り組んでいます。 そして、その課題に心を込めて取り組むことで、そしてそれを舞台の上で「始末をつける」ことで、子どもたちの心身に達成感と成長をもたらすことが出来ると考えております。 すでに発表会の練習が始まっているクラスでは、目標や課題を明らかにすることで、「より良い」努力の仕方も身に付けていますから、8月の発表会ではまたひとまわり成長した子どもたちの姿をご覧になれるかと思いますので、ぜひお楽しみになさってください。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 あたたかくなってきて、お散歩をする機会も増えて来たと思います。 また新入学、進学された生徒さんは新しい通学路にも慣れて来た頃と思います。 バレエでは進級すると、レッスン時間も少しずつ長くなりますし、足(脚)への負荷も高まってきます。 そのような時、くたびれたり強ばったりしている大きな筋肉に、いきなりマッサージや指圧を強い力で行うと、場合によっては逆効果になってしまう場合もありますから、丁寧にケアをしていきましょう。 「痛気持ちいい」は本人の感想であって、それよりも、本当のケアになっているかどうかの方が大切です! 「有名なバレリーナが使っているから」、「先生がやっているから」ではなく、「何が今の自分に必要か?」を考えたり、先生方と相談しなから身体のケアをしていきましょう。 小さい生徒さんは、ご家族とのスキンシップの時間になりますから、ぜひゆったりした気持ちで行ってください。 またゴールデンエイジ期からティーンエイジャーの皆さんは、成長期とともに、大人の骨の形になるべく「骨端」が閉じてくる時期になり、筋肉と骨の齟齬で違和感や痛みが生じることもありますので、丁寧な足(脚)のケアをしてくださいね!(ストレッチとリリースの違い、筋肉・筋膜・皮膚・神経の関係は、また別の記事で書ければと思います。) 今日はバレエを習っている・習っていないに関わらず、「足がだるいなぁ」と感じた時にすぐ出来る足先のケアです。 まずは足先を動かしてみましょう! 足指じゃんけんはぐーっと力をいれたあとに、ふーっと力を抜くことが大切です。力を抜いた瞬間にじわーっとあたたかくなったり、ぼわーんとしたら大正解です。 次に足の指をほぐしていきます。 上下に指をわけて引っ張り、指のまたにも刺激を入れていきましょう。 ただし指の骨は細かく、弱いので、強く引っ張り過ぎないように気を付けましょう。 そして指のまたも動くようになったら、足の指の間に手の指を差し込んで、少し握ったら、ゆっくり大きく足首をまわしてほぐしていきましょう。 特にくるぶしとアキレス腱の間のスペースには、運動をスムーズに行うためのポイント(ツボ?)があるので、稽古の前に少し動かしておいてあげると良いですね。 この運動をスムーズに行うためのポイントも含めて、足先には全身に影響するポイントがいくつかあります。 以前にお話した「アーチ構造」によって土踏まずが作られ、その土踏まずで身体は支えられ、衝撃的から守られているということをお伝えしましたが、そこに動きやすさのポイントを足すことで(ウナ、ソマ、ウマについてはまた別の記事で!)、より良いワークが出来ると思います。 力任せのストレッチや、考えなしの筋トレではなく、より良い「バレエ以前の動き」も、池上校スタジオのレッスンでお伝えしていければと考えておりますので、ご興味をお持ちの方は、ぜひ一度、池上校スタジオまで足をお運びください。(木村)
こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 今回は絵本の紹介です。 皆さんはトルストイという作家をご存じですか? そうです、バレエ作品としても有名な「アンナ・カレーニナ」や「イワンのばか」(バレエを習っている人には「海と真珠」と言った方が分かりやすいでしょうか?)、またオードリー・ヘップバーンの映画として有名な「戦争と平和」を書いた作家です。 難しい小説ばかり書いていそうなイメージですが、トルストイは「イワンのばか」をはじめとした民話風の作品も残しています。 今回ご紹介する「3びきのくま」も、そのような作品名のひとつです。 ストーリーは簡単で、森の中にあるくまのお家に勝手に入ってしまった女の子のお話で、最後はお家を留守にしていたくまの家族と、女の子が遭遇するものの、女の子が逃げて無事だった…というところで終わります。 この絵本を紹介する理由は、この素朴で力強く、それでいてかわいらしい民話風の絵が気に入っている、ということもありますが、3びきのくまのセリフの部分を見てみてください。 大きいくまが話す時には大きな文字で、いちばん小さなくまが話す時には本当に小さな文字で書かれています。 それによって「誰が話しているか」もよく分かりますが、これを声に出して読んでみると、自然と大きなくまのセリフは大きな(お腹から出ているような)声で言いたくなりますし、いちばん小さなくまのセリフは少し頼りなげな感じで言いたくなりませんか?
この絵本はほとんどがひらがなで書かれていて、小さなうちから音読をしたり、しかも役にあわせて声の調子を変えてみるなど、表現力を育てる絵本にもなっています。 バレエでも役柄にあわせて、衣裳だけでなく、歩き方、走り方、立ち方、もちろん踊り方が変わりますから、この絵本ような表現力の育て方も子どもたちのバレエの栄養にもなることでしょう。 役柄によって表現が変わる、というお話もいつか出来れば…と思っていますので、どうぞお楽しみに。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 数回にわたってコミュニケーションとバレエについての投稿をしてまいりましたが、子どもたちを指導する講師たちは何に気を付けてクラスを行っているのでしょうか? 「バレエを教える」ということは、これまでの記事で少しずつお伝えしてきたように、バレエのステップを教えるだけではなく、「より良い」心身の発達のために、身体の知識、立ち居振る舞い、表現の共有、心のフォロー等々、多岐にわたっています。 とは言え、講師も人間であり本人たちもまだまだ「より良い」バレエに向き合うべく、「より良い」人間で在れるように精進している「発展途上」の状態です。 ですが、その「先生であっても、大人であっても、物事に真摯に取り組み、努力する姿」はスタジオの雰囲気として、子どもたちの頑張りを後押しすることでしょう。 またその努力が発表会やスタジオパフォーマンス、外部出演などで美しく結晶化する様子を間近で見る機会があれば、子どもたちの「あんな風になりたい!」と言うエネルギーが推進力と生るかもしれません。 その推進力の兆しを講師はいち早く感じとり、そのチャンスを生かすべく、子どもたちと走り始めます。
その「タイミング」は同じ年齢であっても、同じような環境で育っても、それぞれの「時を満たして」やって来ますから、講師たちはその「タイミング」を心待ちに、そして見逃すことのないように、はらはら、どきどき、わくわくしながらレッスンを行っています。 そして、その「タイミング」は大人のかける一言でぽんっとやって来ることもありますので、講師は「頑張れ!」「出来る!」と言う一方的なエールだけでなく、その「タイミング」を発芽させる声かけを心がけています。 ただ、土から頭を出したばかりのふた葉に直接大量に肥料をかけると、柔らかいふた葉がやけたり、枯れてしまうように、走り出したあとも、時には立ち止まる時間や丁寧に手をかける時間も必要です。 お手伝いの記事でもお伝えしましたが、子どもたちの「頑張りたい!」というやる気スイッチを切ってしまうことなく、「より良い」トライ&エラーを積み重ねながら、丁寧にそして元気よく走っていけるように、バレエのレッスンを通して子どもたちを後押ししていければ…と考えております。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 前回の記事では「お話をするようにバレエを」から紐付けて、レッスンでのコミュニケーションの大切さをお話しました。 今回はそれに加えて「声かけ」や「手当て(触れること)」についても少しお話いたします。 バレエでは解剖学や舞踊史など、いわゆる「座学」と言われる学びも大切ですが、それらはすべて「踊り」のため、パフォーマンスのためのものです。 ですからやはり、レッスンでは知識だけを先行させるのではなく、身体を動かして、トライ&エラーを繰り返しながら、自身を向上させていくことが重要なのです。 そして、身体の感覚や操作性(バレエの限定的な身体操作ではなく)を繊細に、正確に身に付けるために、子どもの頃からレッスンに参加しますから、子どもたちのエラーの修正については「説明」以上に「声かけ」と「手当て」が効果的です。 ですが、この「声かけ」と「手当て」は、講師が一方的に行っても、強い指導や矯正をしても、本当の意味での効果に結びつかない場合もあります。 「声かけ」については、声のトーンやフレーズの長さを工夫をするだけでなく、共通のキーワードやそれに関する体験をクラス全体で共有するという取り組みを実施しています。 また「手当て」の触れ方も、手のひらをメインに圧をかけるようにするのか、指をメインに掴むようにするのか、タッピング(とても軽くたたく)するのか…など、その方法は多岐にわたり、また相手の年齢や体格、レッスン経験の度合いなどで使い分けが必要です。 ちなみに筋肉の緊張をとるための「手当て」である「摩擦」ですが、これは1秒間に5~10cmくらいのペースで擦ってあげると効果的ですので、ストレッチの前や呼吸法の前に行ってみてくださいね。 ただ、発達に難しさがあって「五感(特に触覚)」が過敏にはたらくお子さまの場合には逆効果になることもありますから、そのようなお子さまがレッスンに参加される場合には、講師にその旨をお伝えください。 レッスン内容そのものを変えることは出来ませんが、触れる前に一言声をかけたり、触れる強さやタイミングを調整する事が出来ます。 また、このコロナ禍にあって「人との触れあい」に制限がかかっていたり、時として育児方法の傾向に「人との触れあい」が左右されることもあるようですが、コミュニケーションは「現場」である「子どもたち自身」に起きていますから、常にその「現場」である「子どもたち自身」にとって「より良い」方法を見つけていけるように、心がけていきたいと考えています。 「声かけ」と「手当て(触れること)」はシンプルなコミュニケーションでありながら、子どもたち自身に他者が関わることは「怖いことではない」と理解したり、「楽しいね!」といった気持ちの共感性の向上にもつながりますから、特に小さいうちに、たくさんの良い刺激を共有したいものですね。(木村)
※感覚には視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚と言う「五感」の他に、痛覚、温度覚、振動感覚、平均感覚、固有覚(力加減や手足の動き、位置の感覚)などがあり、私たちはその感覚からの刺激と脳の働きを統合させて行動を決めています。 特に触覚と平均感覚、固有覚のバランスが崩れると、姿勢や動作、身体の動きのバランスも崩れやすくなると言われています。 またこれらのバランスが崩れると、危険に遭遇した時に本能的・反射的に身を守る「原始系」感覚が過剰に働いて、「触れられたくない!」と思ったり、身体がビクッと反応してしまうことがあります。そのバランスを整えるためにも「身体遊び」が効果的です。 こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 ひとつ前の投稿で「お話をするようにバレエを」とは、一体どんなレッスンをしているのだろう?と思われた方も多くいらっしゃると思います。 そのような方はぜひ一度、池上校スタジオの体験レッスンに足をお運びくださいね!講師一同皆さまとお会いできることを、心より願っております。 前回の記事に引き続き、今回は「コミュニケーションとレッスン」というタイトルでお話をしてまいります。 言葉での表現をしないバレエですが、レッスンを行うお稽古場やスタジオでは、たくさんの言葉によって「より良い」バレエ、「より良い」レッスンのための取り組みがなされています。 舞台で踊る人と、客席でご覧になる人とのやりとり(コミュニケーション)で成立するバレエは、仲間とのやりとりや、先生とのやりとりを必要とするものでもあります。
特に年齢を重ね、また習得するステップやテクニックが多くなればなるほど、「より正しく」伝えるための訓練や、表現力の向上に心を砕いて努力しなければなりません。 いつまでも赤ちゃんのように「他の人の努力で分かってもらう」ばかりでは、バレリーナとしてだけでなく、一人の人間としても未成熟なままになってしまうでしょう。 そのために、スタジオではコミュニケーションの部分も大切にレッスンを実施しています。 それは子どもたちがスタジオに入ってくるところから始まっています。 たとえば、子どもたちが元気よく「こんにちは!」と入って来た時に、先生が(そのような先生は一度もお会いしたことはありませんが)何も言わなかったり、自分のスマホに顔を向けたまま「はい、こんにちは~」と返したらどうでしょうか? 子どもたちはもしかしたら無意識に「自分はそのくらいの<大切さ>しかないんだ…」という感覚経験を積み重ねてしまうかもしれませんし、「あいさつは<言えばいい>んだ」と理解してしまうかもしれません。 そして前者のケースでは、子どもが自分自身を大切に思えず、他者から自身を守るために批判的・攻撃的になってしまうかもしれませんし、後者のケースでは頭で分かっているだけの(良くない意味で)要領のよい人になってしまうかもしれません。 そうなってから「指導」したり、ましてや「修正」しようと大人が上からものを言っても、子どもたちの心には「実感」をもって届くようにはなりませんから、日々のやりとりからレッスンの準備が始まっているのではないでしょうか? また子どもたちは自身の体験を処理するために「語る」ことを本能的にしていきます。(大人も「今日さぁ~聞いてよ~」と一通り話してすっきり納得!ということがありますね。) 講師は「単なるおしゃべり」なのか、「情報の整理のための<語り>なのか」、時には「何かをしたくないための<猶予作り>なのか」をしっかりと見極めて対応をしています。 実際のレッスンの様子は、声かけや手当てなどのテーマでまた別の機会にお話しますね。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。
今回は身体遊びシリーズです。 これまでのワークと違って、お手伝いする大人も「少しキツい」ものになっていますが、楽しんで取り組んでみてくださいね。 ①跳びこえ回り 大人は座って脚を軽く開きます。 子どもはその脚を跳びこえ、大人の周りをぐるっと回って、もう一度跳びこえる…を繰り返します。 楽しいと感じる動作を繰り返すことは、子どもたちにとって面白い!と感じられるものです。 慣れてきたら、少しずつ脚を床から浮かせて、ジャンプのハードルを上げるだけでなく、大人の腹筋のトレーニングもしていきましょう。 両足一度に跳んでも良いですが、片足ずつ跨ぎ越すように跳ぶと「pas de chat」の足のタイミングを取得することが出来ます。 ②自転車漕ぎ 大人も子どもも向かい合って座り、足の裏同士をペタッと合わせておきます。両者の息を合わせてペダルを漕ぐように、ぐるぐると脚を回します。 慣れてきたら両手を万歳のように持ち上げれば、体幹のトレーニングになりますし、その動作をしながら歌を歌ったり、じゃんけんをしたり、「ジュゲムジュゲム…」を唱えたりすると、脳への刺激にもなります。 ③跳びこえグーパー 大人は座って脚を軽く開きます。 子どもは大人の脚の間に立ち、大人と手を繋ぎます。 大人が脚を閉じる時に、子どもはジャンプして大人の脚の外側にパーの脚で着地します。 速度を上げたり、手を繋がないで実施したりしても、はらはらどきどきで楽しいです。 ④手押し車 子どもは床に手をつき、大人は子どもの足首を持って胴体を浮かせます。子どもたちは手で身体を支えて進んでいきます。 先日の記事で紹介した「動物歩き」からあざらしの発展バージョンです。 サポートする大人は子どもたちが胴体と腕(手)の関係で身体をしっかり支え、また背骨の動きで、頭や骨盤が自然と左右に揺れながら歩くのを見ることが出来るでしょう。 少し力持ちのお子さまなら「自分もおんぶ出来るもんね!」というのと同じように、大人の脚を持ちたがるかもしれません。 そんな時は、ぜひ大人の皆さんもトライしてみてください。 さて今回は「大人もトレーニングになるかも」というワーク ご紹介しました。 文科省のすすめでは、子どもの1日の身体遊び・運動の目安時間は60分程度と言われています。 でもなかなか60分も運動するのは難しいかと思いますので、スキンシップもかねて、お家での身体遊びを楽しんでください。 「大人を跳びこえるなんて、大人の尊厳が…」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、このトレーニングの目的のひとつには「人との触れあい」にもありますから、大人の尊厳は日頃の立ち居振る舞いや、言動、また大人の見せる(子どもにとっては魔法のような)成果などで、十分に子どもたちに伝わっていると思いますので、存分に楽しんでください。 この「触れあい」の刺激や、この刺激と信頼感の関係性は、他者との関わり方や、レッスンでアドバイスをもらう時の筋肉反応、またゆくゆくは主役やソリストでパ・ド・ドゥ(pas de deux)を踊ってみたい!踊ってほしい!時には、この他者との関わり方が、「踊る以前の問題」として大きく影響しますので、人と触れあうことの大切さが、子どもたちに伝わると良いと思います。 池上校スタジオでは、「バレエ以前」の身体性、運動性、操作性、をきちんと育めるレッスンを行っております。合わせて小さいうちから「外界からの刺激を処理する力」を伸ばしていくことで、バレエに限らず物事に向き合える姿勢、人に向き合える心を育てていきます。(木村) |