こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 新宿マルイ本館の写真展「Ballet Authentic」でも、その様子を見ることが出来ますが、バレエと言えばこの「アラベスク」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか? 「アラベスク」とは「アラビア風の」という意味で、このアラベスク模様はイスラーム美術として有名な唐草模様を指しますが、なぜバレエのアラベスクがこのようなポジションをとるのか、今のところ、詳しいことは分かっていないようです。 バレエが明確な形をとることになったフランスと「アラベスク」との関係は、古代ローマの皇帝ネロの時代に作られた「ドムス・アウレア」などに代表される「グロッタ(洞窟、地下墓所)」の壁面装飾に使われていた「グロテスク」という模様がフランスに伝わってから、ルイ14世の時代により洗練されたものとなり、それが「アラベスク」と呼ばれていたことが分かっています。 バレエのアラベスクは、このアラベスク模様をモデルにしているとも言われていますが、「バレエ・ダクション(アクション・バレエ、物語バレエ)」を提唱したジャン=ジョルジュ・ノヴェールは、それまでのバレエを「脚の動きや、高い跳躍が全てだと思っている」とし、そのようなダンサーたちのアラベスクを、ブールヴァール(グラン・ブールヴァール通りにあった芝居小屋でのパフォーマンス)で使われる「バレエ的なダンス」であるとまで言っています。 ノヴェールの思想をテクニックに活かそうとしていたブラーシス(ブラジス)は、「天駆けるマーキュリー(ヘルメス神)」像からヒントを得たと言われている「アティテュード」からのヴァリエーションとして様々な「アラベスク」をとらえていたようです。 ではノヴェールの提唱した「バレエ・ダクション」の中で、現在私たちが目にしているようなアラベスクの許容だけでなく、多用がなされるようになっていくには、どのような段階をふんでいくのでしょうか?
それらの美術の流行、パフォーマンス小屋での見世物、学術的なバレエのジャンル分け、エキゾチシズムや、イタリア文化のとらえ方、様々な要素が時間を経て混ざり合い、整って来たことで、ようやくアラベスクがアラベスクとして洗練される道筋が出来て行きましたが…ここまでで、お話が難しくなってきてしまったので、次の投稿では「私たちが取り組むアラベスク」についてのお話をしていきますね。(木村)
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こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 6月7日(火)から新宿マルイ本館8階イベントスペースにて、写真展の第2弾がスタートいたしました。 ご好評いただきました「ballet authentic」の拡大展示として4階での展示と平行して行われていますが、「拡大」はスペースだけのお話しではなく、展示されているお写真の大きさや、枚数までもが「拡大」されているので、そのスケールや迫力をぜひ現場で体験していただきたいと思います。 4階の展示も引き続き行われ、少しずつ展示されているお写真の内容が変わって来ていますし、お隣の「beautystand+」でのお買い物とあわせてお楽しみいただければと思います。 バレエ写真家の後藤奈津子さんや、「ballet authentic」で被写体を務めたダンサーたちの在廊スケジュールなどは、Twitterにてアナウンスしておりますので、どうぞご確認ください。(不在の場合でも、ご自由にご入場いただき、お写真をご覧いただくことが出来ます。) 今回の写真展を通して、ご来場の皆さまからは「たったひとつの正解に向かって日々の鍛練をする、そのこと自体も<芸術>なんですね」と言う声を多くいただきます。 バレエと聞いてイメージする「きらきら」や「ひらひら」などの奥に見え隠れする「本当の輝き」を、バレエに詳しい方も、そうでない方も、見出だしてくださっていることに嬉しい驚きを覚えています。 それは「正解のポジションやポーズになったからOK」と言うことではなく、それにむかって自分自身を丁寧に導き、時には自分自身と戦いながら、理想のバレエに自分自身を近付けていくことです。 時にはバレエに自分自身を投げ出し、捧げるくらいの気持ちで臨まなければならないこともあります。 バレエにおいて「私らしさ」は、そこまでバレエのワークに取り組み続け、役に向き合い続けたその先に、ようやく薫り立つものです。 そうなる前に「自分が、自分が!」という「欲」だけで日々を送っていると、大変言葉が汚いのですが…「ヤバい」とか「すげぇ」と言うような、表層的なパフォーマンスとなってしまい、ダンサーにとっても、ご覧になるお客さまにとってもバレエが「ファストフード」のような「まぁ食べられればいいか」という存在になってしまったり、「期間限定の○○だって!はい、インスタに載せたから満足です」という存在になってしまいます。 ファストフードはその時は(塩分と油の効果で)美味しいと思うかもしれませんし、その時はお腹が満たされて満足するかもしれませんが、その栄養は本当に自分のためになるでしょうか? そしてその「食事」にまつわる「思い出」や、その時に感じたことは心に残り栄養になっているでしょうか? また「期間限定」という言葉に、自分も体験した!と言っておかなければ、という理由だけで物事に向き合っていると、「体験した」という「出来事」だけが「事実」として残り、その時に感じたことや、自分の糧に(「利益」などという狭い価値観ではなく)なったことを思い出せない…とういことにもなりかねません。 バレエを含め、舞台で行われる芸術活動は「いま、ここ」でしか体験出来ない、ある意味では「期間限定」の芸術です。 ですが、ご覧になった皆さまの手のひらの上に、その形をとどめるものが無かろうとも、皆さまの記憶と心の中にとどまり続け、輝き続ける「何か」をお届け出来れば…と、日々のレッスンに心身ともに取り組んでいます。 ぜひその輝きを探しに会場へ足をお運びくださいませ。(木村)
こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 関東でも梅雨入りし、なかなか思ったようにお外遊びが出来ない毎日が続きますが、上手にお家時間を利用して、少しずつでも身体を動かすようにしましょう。 お勉強などでデスクワークが長時間続くと、身体も酸素不足、血流の低下などから効率が下がるので、時間を決めて身体を動かしてリフレッシュ出来ると良いですね! 今回はバレエだけでなく、スポーツなどでも役に立つストレッチやワークをお伝えしてまいります。 バレエと言えば柔軟体操!開脚してぺったりお腹をつけて、耳の横まで脚をあげて、おでこと爪先をくっ付けて…と考えがちですが、近年では(ようやく)「バレエの生徒はバレエのワークだけをやれば良い」とか、「腹筋が弱いから○○出来ない」、「まずは柔軟体操!」というような、「単品」の考え方が改められ、複合的な動きや「筋肉も使いつつ、可動域も広げつつ」というようなワークが増えてきました。 以前テレビで、英国的ロイヤルバレエ団の高田茜さんが、バレエ団内のジムで、大きなバーベルを肩に担いでスクワットをしている様子が放送されましたね。 脚を外旋させないで、お尻を引いてスクワットをする様子は、少し昔なら「スクワットをパラレルでするなんて、脚が太くなる!」と怒られていたかもしれません。 ですが、スクワットは正しく行えば脚のことだけではなく、股関節の位置を調整するのにも使えますし、負荷をかけることで、身体の感覚を目覚めさせることも出来ます。 もちろんそれらのワークを「バレエに活かす」には、バレエのワークで試してみることが必要なのですが…(トレーニングすることだけに集中してしまったり、達成感を覚えて満足してしまうのは、本来の目的とは異なりますね。) 木村のワークはスポーツをするジュニアにも応用が出来るものばかりですから、「バレエ以前」に身体を整えたい方にも、運動の効率を上げたい方にも効果があります。 股関節ぱたぱた 脇の下ほぐし みぞおちほぐし 牛の顔のポーズ プレ・コモドとコモド・ストレッチ 胸椎ストレッチ 腰椎モビリティ どれも運動のエネルギーの矢印や、ストレッチの方向が「一方通行」ではないことが分かりますね。
バレエの動き(もちろん他のスポーツでも)は先の投稿でもあげた「牧神の午後」のように、平面的な表現であったとしても、身体の使い方はあくまでも3Dですから、そのためのワークも立体的・複合的に行いたいものです。 ただし、以前の投稿でもお伝えしたように「見よう見まね」でのワークは、効果が低いばかりか、怪我につながる場合もあるので、きちんと指導者の下で行うようにしましょう! いまだにSNSなどに「オーバーストレッチ」の様子や、「世界びっくり人間大会」のような動画や写真が投稿されていることに危機感を覚えます。 子どもたちへのSNSなどからの影響はとても大きいので、管理する大人がきちんと気を付けて、また先生の指導の下、スタジオできちんとレッスンの様子をチェックしてもらうことが大切ですね!(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 今年は「いつもより遅い梅雨入り」と言われていましたが、関東でもあっという間に梅雨入りし、お天気が不安定になってきました。 お天気の変化や気圧の変化は、脳を浮腫ませたり、鼓膜を引っ張ったりするので、「病気ではないけれど、何だか体調や気分がすっきりしない…」という人もいると思います。 そのような時には、軽い運動をすることで症状が軽減されると、西洋医学でも、東洋医学でも言われていますから、レッスンで体調を整えていきましょう。 もちろん、しっかり睡眠をとること、バランスのとれた食事をきちんととることも大切です。 おやつも過度のお砂糖は身体をくたびれさせたり、「湿」を溜めてしまいますから、あずきやさつまいも、とうもろこしなどがおすすめです!「食養生」についてはまた別の記事でご紹介しますね。 さて、本日ご紹介するのは「ピーターと狼」という作品です。 これはロシアの作曲家、セルゲイ・プロコフィエフの作曲した子どものための音楽作品で、台本はロシアの民話を元にプロコフィエフ自身が書きました。 クラシックの音楽作品には珍しく、ナレーションもはじめから付けられている「子どものための交響的物語」として1936年に初演をむかえ、この作品は日本でも多くの俳優のナレーションで上演され、CDにもなっています。 主人公のピーターは、森の隣の牧場でおじいさんと、ペットのネコと暮らしています。 森の奥には怖い狼が住んでいるので、おじいさんからは「子ども一人で外に出てはいけないよ!」と言われていました。 でも、いたずらっ子でやんちゃなピーターは、あまり気にしていない様子で、のんびりやのアヒルを追いかけたり、おしゃべりな小鳥と遊んだりしています。 そこへお腹を空かせた狼が忍び込んできました。 のんびりとお散歩をしているアヒルに飛びかかると、あっという間にペロリッとアヒルを丸のみにしてしまいました! (ネコは木に駆け上がり、小鳥は飛んで逃げることが出来ました。) ピーターは、狼のお腹の中からアヒルを助けるための作戦を考えます。 「小鳥さん、狼の周りを飛び回って、気を引いておいてほしいんだ!その間に、僕がこのロープで狼を捕まえるからね」 作戦は大成功!狼はしっぽを捕まえられて、身動きがとれなくなってしまいました。 ちょうどその時、猟師のおじさんたちが通りかかったので、ピーターたちは捕まえた狼をおじさんたちに引き渡しました。 狼を退治したピーターたちは大喜びで大行進! …でも、丸のみにされたアヒルはどこでしょう?狼のお腹の中から何か聞こえてきませんか? この作品は「交響的物語」と言うだけあって、ナレーションの効果はもちろんのこと、オーケストラの演奏にも、まるでセリフがあるかのように聴こえます。 実は「ピーターと狼」では登場人物一人一人に、その役の楽器やメロディが決められていて、音楽を聴いているだけで、その場面を想像することが出来るようになっています。 ピーターは元気で軽やかな弦楽器、おじいさんは深みのあるファゴット、おしゃべりな小鳥はフルート、のんびり屋なアヒルはオーボエ、逃げ足の速いネコはクラリネット、狼はホルン、そして猟師のおじさんたちは木管楽器やトランペットで表されていますから、耳をすませて「今は誰がお話をしているのかな?」と想像してみてくださいね。
子どもたちが音楽に触れたり、楽器のことを知ることが出来る「ピーターと狼」は全部を通しても20~25分程度の短い作品ですから、ぜひご家族でお楽しみください。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 6月11日(土)に開催されるイベント付きレッスン体験会を前に、通常レッスンの体験にもお申し込みをいただいております。「百聞は一見に如かず」と昔のことわざにありますが、「百見は一体験に如かず」でもありますから、ご興味をおもちの皆さまは、ぜひ一度、池上校スタジオまで足をお運びくださいませ。 今回の記事では、そのレッスンを行う「場」についてお話いたします。 稽古場(スタジオ)は、生徒の皆さんがけがをせず、楽しく、のびのびとレッスンに励めるように、十分なスペースを確保していますが、広々としたスタジオが理想的であることには、2つの理由があります。 ひとつめは、「身体の可動範囲の向上」です。 例えば皆さんが小さなスペースの真ん中に居るとしましょう。 戸棚にも、コンロにも、冷蔵庫にもすぐ手が届き、テレビやエアコンはリモコンを使えばスイッチを入れられる…という状態では、移動しなくても、手を伸ばさなくても、背伸びをしなくても、すべての用事は済んでしまいますね。 そうすると、皆さんの身体はだんだんと「動かなくてもいいんだ」と怠けてゆき、もしかしたら、本当に動きたい時に動けないことになってしまうかもしれません。 広い稽古場では、レッスンでの動きはもちろんのこと、ワークとワークの間の移動なども、しっかり動く必要がありますから、自然と体力や筋力が向上していきます。(もちろんダラダラと動いていては、その効果も半減しますから、てきぱきとしましょうね。) ふたつめは、「気持ちの設定」です。 もともとバレエが王侯貴族の余興として、宮殿の中で行われてきたお話をしてきましたが、バレエが行われる「場」だけが広い訳ではなく、その王様たちが日々の生活を送るお部屋も、とてもとても広いのです。 例えば王様たちが実際に用事をこなさなくとも、それをサポートする侍女たちは広いお部屋のあちらこちらを移動しなければなりません。 ということは、お仕事が完了するまでにある程度の「時間」が必要になる、ということを王様たちは理解しているのです。(もしいじわるなお姫さまなら「早くしなさい!」と無理を言うかもしれませんが、たいていそのようなお姫さまは、魔法使いや妖精に「へんてこりん」な生き物に変えられてしまいますね!) 広い空間でレッスンをするということは、何でもかんでも「スピード」重視な21世紀において、バレエが生まれた頃の王侯貴族たちの体感していたであろう「時間」を表現することにもつながるのです。 ただ、小さいお子さまの場合は広すぎる空間に「集中力」が分散してしまうこともあるので、そのような場合はイスやパーティションを置いて、あえて空間を小さくしてレッスンすることもあります。
その空間と気持ちのバランスを整えるのは、大人の役目ですから、レッスンだけでなく、ご自宅や幼稚園、小学校でも色々と工夫が出来そうですね! 特に池上校スタジオでは、お子さまが集中力して、なおかつのびのびとレッスンするのに程よいスペースのスタジオとなっています。 また壁一面が窓になっているので、お天気の日には明るい日差しに気持ちも自然と楽しくなりそうです。 ぜひ一度、池上校スタジオを覗いてみてくださいね!(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 先日の投稿に引き続き「マイフェア・レディ」のお話をしていきますね。 ところで「マイフェア」ですが、実は「メイフェア(Mayfair)」が正しい発音なのです。 つまり「メイフェアのお嬢さん」という題名で、メイフェアで暮らす主人公のイライザを表しています。 「マイフェア」はメイフェアの下町訛りですが、都会で生活している人の中でも「エイ」の音を「アイ」と発音することがありますから、イライザたちだけの発音ではなさそうですね。 メイフェアはロンドンの一区画で、隣にハイド・パークやバッキンガム宮殿がある地域です。 映画では雑多な感じがありますが、今ではあのざわざわとした感じは少ないように思います。 さて、ヒギンズ教授の下で下町訛りを矯正し、マナーを覚え、立ち居振る舞いの訓練をしたイライザは、美しいレディとして人前に立てるようになり、イライザが花売り娘であると想像する人は誰も居ないまでになりました。(中にはイライザを王族の出身だと思う人まであらわれます!それほどまでにイライザの言動は「レディ」にふさわしかったのです。)
小さい頃から決して美しくない言葉づかいで生活してきたイライザには、山ほどの課題と、厳しい訓練が必要で、一度はヒギンズ教授の計画から逃げ出そうとしましたが、「The rain in Spain stays mainly in the plain (スペインの雨は主に平野に降る)」を完璧に発音出来たことを境に、彼女は前向きに特訓に取り組むようになります。 (この文章は「エイ」の発音を練習するのにうってつけですね!) さてイライザを「王族の出身」とまで思わせることの出来たヒギンズ教授は、舞踏会のあと、とてもご機嫌で帰宅しました。 イライザに「良くやった!」とは言うものの、それまでの彼女の取り組みへのねぎらいや、あたたかい思いやりの言葉はほとんど無く、自分の計画の成功を喜んでばかりのヒギンズ教授に、イライザは「一人の人間、一人の女性として自分を見ていない」と落胆し、下宿していたヒギンズ教授の屋敷からそっと姿を消してしまうのです。 この場面に私たち講師は共感もしますし、気付きもあります。 「誰のためのレッスンなのか」、「何のための厳しさなのか」、「成功は誰のものか」を「先生」である私たちは忘れてはなりません。 生徒の皆さんの成長は、講師にとって何にも代えがたい喜びでもありますが、それはあくまでも生徒の努力の賜物であり、講師は子どもたちの「伸び代」を見付けること、「やる気スイッチ」を押してあげること、「正しい知識」を伝えること、「正しい方法」で実施出来るように見守ることくらいしか出来ません。 木村は「上手くいったら子どものおかげ、失敗したら大人の責任」と思いながら指導をしていますが、だからこそ生徒の皆さんには「いい加減」の入り込む余地が無いように、一生懸命レッスンに取り組んでほしいとお伝えしています。 さて、イライザの居なくなったことに気付いたヒギンズ教授はどうするのでしょうか?ハッピーエンドになるかどうかは、ぜひ映画をご覧くださいね!(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 みなとシティバレエ団附属三田バレエスクールの発表会が、8月11日(木)に開催されます。 本番まで2ヶ月をきり、生徒のみなさんは振り付けを覚え、それを作品に仕上げるために日々レッスンに取り組んでいることでしょう。 より良い発表会をお客さまにお届けできるよう、それぞれが出来ることを一生懸命して本番に臨めると良いですね。 本番を前にして、衣裳を準備するための「採寸」と「衣裳合わせ」が行われます。 スクールが所有しているお衣裳の他に、外部のお衣裳をお借りする場合もありますから、スムーズに作業が進められるようにしていきましょう。 さて子ども用のバレエのお衣裳は、写真のような胴体がレオタードのように伸縮性のある布で出来ているものが多くあります。
ですが、レオタードと同じように気軽にお洗濯出来るわけではありません。 胴体部分にはレースやスパンコールなどの繊細な飾りがついていますし、スカート部分は水に弱い材質の布が使われていることが多いので、お衣裳をいただいたら本番まで丁寧に保管してくださいね。 自宅で保管する場合は、ハンガーにかけて、風通しの良い(湿度の低い)直射日光にあたらない場所で保管しましょう。 また、木村が担当していた生徒さんのお家では、ふわふわのスカートに興味を持ったペットの猫ちゃんが、ぶら下がっていたお衣裳にじゃれてしまって、スカートが「ジャキジャキ」になってしまった…というハプニングがありました。 ペットや小さいお子さんのいらっしゃるご家庭では、その点もお気をつけください。 身体にフィットしたお衣裳を身につけることは、舞台に立つためにとても大切なことですから、「サイズを変える必要はないけれど、何だか肩のところが気になる…」とか、「こんな着方で大丈夫かな…」と思ったら、お気軽に担任の先生にご相談くださいね! 「どんな風にお衣裳を着こなすか」、「どんな風に髪飾りを付けるか」、「どんなメイクをするか」など、経験を積まないと分からないことがありますから、経験豊富な先生方からたくさん教えていただいて、素敵なバレリーナになりましょうね。 夏の発表会にはまだ参加しない池上スクールでも、6月11日に開催される体験レッスンの際に、お衣裳の着用体験もしていただけますので、ぜひ池上校スタジオへ足をお運びください。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 木村のレッスンCDの中に「マイフェア・レディ」の中で歌われる「運が良けりゃ(With a Little Bit of Luck)」の曲が入っています。 皆さんは「マイフェア・レディ」を観たことがありますか? 木村はオードリー・ヘップバーンが主人公・イライザを演じた映画版を観てきましたが、皆さんのお父さんお母さん、おじいちゃまおばあちゃまは、「メアリー・ポピンズ」で有名なジュリー・アンドリュースが主演したミュージカル版を体験しているかもしれませんね。 日本では大地真央さんが長年イライザを演じてこられ、最近では朝霞まなとさん、神田沙也加さんがダブルキャストで主演されました。 この「運が良けりゃ」は主人公・イライザの父親・アルフレッドが歌う曲なのですが、これがまた「お調子者」な感じが「むむむ…!」と、真面目な人が聴けばとても納得いかない感じの内容なのです。 ですが、このアルフレッドを演じるスタンウェイ・ハロウェイという俳優さんが良い味を出していて、何だか憎めない存在でもあります。 さて、この曲はレッスンCDの中では「バトマン・フラッペ(battement frappe)」で使われているのですが、この曲を聞くたびに、メロディの明るさだけでなく、歌詞の内容を思い出して緊張が少しほぐれるのを感じます。
ここから数回にわたって「マイフェア・レディ」を例にあげて、いくつかのテーマでお話をしていきたいと考えております。 今回の記事でお伝えしたいことは「音楽の雰囲気や意図をキャッチしよう!」です。 以前に投稿した記事でも、レッスンで使う音楽には「なぜこのリズムなのか?」「なぜ長調(短調)なのか?」「なぜ3拍子(2拍子、4拍子)なのか?」理由がある、とお話しましたが、それに加えて「なぜ同じ4拍子でも、この曲を選んだのか?」も考えてみると面白いと思います。 音楽は単なるBGMではありません。 チャイコフスキーが言ったように「バレエで用いられる音楽は、音楽としても素晴らしいものであるべき」ですし、その音楽を踊りという「目に見えるもの」にしていくことで、舞台の上のダンサーと客席の方たちで「共有」することが出来ます。 「私が目立ちたい!」という小さな(狭い)気持ちが、だんだんと「より良い時空間を共有したい」という大きな(広い)気持ちになってくると、劇場という大きな空間で踊る時にも、きちんと客席に届く踊りをすることが出来るようになるのではないでしょうか? そのためにもたくさんの音楽に興味を持ち、また様々な芸術やエンターテイメントにもアンテナをひろげて、色々なことをキャッチ出来るようになると良いですね!(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 新宿マルイ本館で行われている、写真展「Ballet Authentic」はご覧いただけましたでしょうか? 6月の2週目には展示内容が変わり、また会場も(マルイ本館ではありますが)大幅にリニューアルされますので、まだご覧になっていない方はお急ぎください。 また、会期中に何度も足をお運びいただいてくださった皆さまには、ぜひ後半戦の展示も楽しみにお待ちいただければと思います! 近年の技術の発達で、スマートフォンでもきれいな写真が撮影出来るようになり、またInstagramなどのSNSで気軽に多くの人と共有出来るようになりました。 バレエやダンスでの写真と言えば、公演や発表会などでの舞台写真が主となりますが、それらも大きく分けて「記念や記録としての写真」と「作品を伝えるための写真」があるように思います。 写真は映像と違って動きませんから、その使い方としては「ある一瞬」を切り取り、画面に紙面にやきつけることになります。 さて、その1枚からは何が見えて来るでしょうか? そのダンサーが実際に踊っているところに立ち会ったことがなくても、その作品を観たことがまだなくても、まるでその人の踊る様子を観たかのように感じられる、まるでその場に居たかのように感じられる写真であったとしたら、その写真も「生きた作品」として素晴らしい存在であると言えるでしょう。 もしかすると、そのダンサーが今までどれだけ踊りに心を傾けてきたか、その作品への想いがこもっているか、という「愛」や「熱量」までをも感じられる、素晴らしい体験が出来る人もいるかもしれませんね。 ダンサーはポーズ、ポーズを舞台でお見せするわけではなく、むしろそのポーズとポーズ、ポジションとポジションを「どうやって繋いでいくか」、言葉の無い身体表現の作品を「どうやって紡いでいくか」、作品の時空間的な「共有」を目指しています。 そのために音楽があり、たとえ音楽がなかったとしても、自分達の呼吸や心臓の鼓動をリズムにして、時間的な表現を行えますし、その時間の経過によってポジションからポジションへの繋がりを空間的に表すことが出来ますね。 かつてヨーロッパでは36面体の中に入って、「ここから、ここへ、このように身体のパーツが移動する」と言うような、ダンスにおけるポジションと動きの解明を目指した研究もされましたし、逆に「牧神の午後」という作品のように、あえてレリーフのような平面的な表現に挑んだ踊りもあります。 この「牧神の午後」はドビュッシー作曲、ニジンスキー振り付けの作品ですが、その平面的な表現から立ち現れるのは、むしろより生き生きとした神話世界の登場人物の「在りさま」です。古典バレエの華やかさとは異なりますが、ぜひ一度ご覧くださいね。 「牧神の午後」より
芸術は立ち止まることを知りません。 それは芸術に携わる私たち人間が「生きている」からでもあります。 これからも時間の流れや、空間のひろがりや、体温を感じられる芸術であることを忘れず、それらを多くの人と共有するために「共通言語」としてのポジションや、ステップを丁寧に磨いていくことが大切だと考えています。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 木村がバレエを習い始めたのは、幼稚園の年長組だった6才の頃です。 今でこそ、スポーツクラブやカルチャーセンターなどで「気軽に」バレエを習えますが、当時は「習い事」というよりは「稽古事」として、今以上に「入門する」というような考え方でした。 当時の記憶は断片的ですが、初めてのストレッチが思った以上に出来なかったこと、自分で振り付けをする課題が大好きだったこと、お姉さんたちのクラスに進級したばかりで緊張したこと、クラスのみんなでお昼ごはんをいただいたこと…などを覚えています。 自分が「先生」という立場になって、改めて子どもたちと向き合うと、何かのイベントでの思い出よりも、日々のレッスンでのひとりひとりの様子の方が印象に残っているように思います。 ケンケンが出来た、バランスがとれた、爪先がきれいになった、エポールマンが美しかった…色々な「出来た!」を子どもたちと共有出来た瞬間の、子どもたちのきらきらしたお顔や、自信をつけた様子が「先生」である自分にはとても嬉しく思えるのです。 先日、それまでずっと「下級生」だった生徒さんが、小さい生徒さんのお世話をしたり、こそこそっとアドバイスをしてあげている様子を見て(しかも正しいことを、分かりやすい言葉で伝えていました)、彼女の精神的な成長にびっくりもし、嬉しくもあり、担任ながら感心しました。 子どもたちの成長は技術的なことばかりではありません。 みなとシティバレエ団付属池上バレエスクールでは、バレエのレッスンを通じて「より良い」「より正しい」バレエの習得はもちろんのこと、子どもたちの心身の可能性や伸び代を見守り、支えることも出来ればと考えております。 バレエは嘘がつけない芸術です。
流行に左右されるような表面的な美醜の評価や、作品理解、表現の仕方には、時代や個人的な価値観も反映されますが、400年以上伝えられ、バレエに携わる全ての人が求めてきた「真・善・美」は、「インスタ映え」をはるかに超えて人々の心の奥底に届きます。 手元に残るような、形のあるものではないからこそ、本当の意味での「豊かさ」を共有出来るのではないでしょうか。 ぜひ多くのお子さまとご縁をいただき、そんな「豊かさ」をともに味わっていけますことを、心より願っております。(木村) |