こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 再び新型コロナウイルスの勢いが増してきて、不安を感じている方も多いかと思います。 池上校ではレッスン日の土曜日はもちろんのこと、他の曜日にも換気とお掃除をこまめに実施していますので、安心してお越しください。(スタジオの手指消毒はアルコールタイプですので、小さいお子さまで手を口に入れる可能性のある場合は、お手数ですが自前のハンドジェルなどをお持ちください。) 今回は「The Happy Price」というお話をご紹介いたします。 日本では「幸福の王子」「幸福な王子」、「幸せの王子」「幸せな王子」、と少しずつ違うタイトルがつけられています。 細かいことを言えば、日本語の「幸福<の>王子」と「幸福<な>王子」では意味合いが異なるので、ここでは原題の「The Happy Price」というタイトルでのご紹介となりました。 (三大バレエ作品である「眠れる森の美女」でも同じようなことが言えます。ペローの原題は「La Bell au bois dormant」であり、修飾の「眠れる」は美女にも森にも使うことが出来ますが、英語タイトルの「The Sleeping Beauty」を考えるとやはり美女の方にかかると考えられます。) 「The Happy Price」はアイルランド出身の作家、オスカー・ワイルドの作品です。 オスカー・ワイルドは「ドリアン・グレイの肖像」や「サロメ」でも有名ですが、木村は「The Happy Price」におさめられている「バラとナイチンゲール」というお話も子どもの頃によく読みました。 ある街の柱の上に「The Happy Price」と呼ばれる像が立っていましたが、その身体は金箔で包まれ、瞳の代わりに二粒のサファイアが、腰にさげた剣にはルビーがはめ込まれており、その美しい姿は街の人々の自慢でした。
ですが、この王子の像にかつて若くして亡くなった王子の魂が宿っていて、街の様子をずっと見つめ続けていること、そして自身が宮殿にいた時は目にすることの無かった、街の人々の貧しさや不幸に心を痛めていることを、街の人々は知りません。 ある日、南の国に渡ろうとしていたつばめが、王子の像の足下で休んでいると、上からぽたりぽたりと滴が落ちてきます。それは街の様子に悲しむ王子の涙でした。 王子はつばめに頼んで、貧しい人々に、自身の身体に付いている宝石や金箔を届けてもらいます。 つばめはこの街の寒い冬を乗り越えることは出来ませんが、王子の言葉や、助けられた人々の様子を見て、王子を助け続けようと決めました。 そうしているうちに、王子の美しい姿はぼろぼろになり、つばめも死んでしまいました。 街の人々はぼろぼろになった王子の像と、つばめのなきがらを捨ててしまいます。 その時、天から街の様子を見ていた神様は、天使たちに「あの街で最も尊いものを2つ持ってきなさい」とお命じになり、天使たちは王子の像の中に入っていた鉛の心臓とつばめのなきがらを天に持ち帰りました。 神様は王子の行いとつばめの働きをご存じだったので、良い選択をした天使たちをお褒めになり、天に迎えられた王子とつばめは天の国で永遠の幸せを得たのでした。 王子のあたたかい思いやりにももちろんですが、つばめの良い行いを続ける覚悟にも胸を打たれますし、強い共感を覚えます。 そしてその一方で、美しい姿の王子を自慢にし、その姿がみすぼらしものになったとたんに柱から引き下ろしてしまった街の人々の振る舞いに残念な気持ちになってしまいます。 本当の美しさとは何なのか、何が良い行いなのか…? バレエは努力を積み重ねてようやく輝く美しい芸術でもあり、人間の気持ちを表す手段でもあり、その技術はダンサーの自己肯定感を満足させるものでもあります。 ですが、王子の思いやりに気付かずに柱から引き下ろしてしまった街の人々のように、「自分達のため」の願いを真っ先に思い浮かべ、行動してしまうことのないように、心がけていきたいものですね。(木村)
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こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 バレエの作品には、童話や小説をもとにしたものが多くありますが、バレエ化する際にはストーリーを簡単にしたり、クライマックスの場面を変更して、ダンサーたちが活躍出来るように作りかえることも多々あります。 今回はその最たるもの、と言っても良いくらいな「ドン・キホーテ」についてのお話です。 バレエの「ドン・キホーテ」ではバルセロナの人気者・キトリと、街の床屋・バジルの恋物語を中心にストーリーが進んでいきます。 ですが、セルバンデスの書いた「ドン・キホーテ」は、文字通りドン・キホーテが主人公の物語です。 全幕バレエとして上演される場合には、その冒頭でドン・キホーテがどのような人物かの紹介がされる大切な場面がありますが、ここでもドン・キホーテという人についての説明をしておきましょう。 スペイン中部に位置するラ・マンチャという地域のとある村に、一人の郷士(イダルゴ)が暮らしていましたが、彼は騎士物語を読みすぎたために、自らも騎士であると思い込み「ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」と名乗って遍歴の旅に出ることを決心します。 しかし郷士というものは、貴族とは言っても、名ばかりで納税の義務は免れていますが、その資産はほとんど無い人々です。 ですから、騎士としての甲冑を用意することも、従者を引き連れることも、誉れを立てるための思い姫と出会うことも出来ないばかりか、そもそも騎士としての位を与えられる機会もありません。 ですが、そこは思い込みの力に支えられ、自分の屋敷にあるぼろぼろの甲冑にがらくたを組み合わせたものを身につけ、近所の農夫であるサンチョ・パンサを従者に取り立てて、やせっぽちの老馬・ロシナンテとともに出発しました。 騎士の位は宿屋の主人をその想像力で変身させて叙任式を行わせ、思い姫については、またまた近所の百姓の娘であるアルドンサ・ロレンソをドルシネア・デル・トボーソという貴婦人(姫)に見立てることにしたのでした。
物語の冒頭からはちゃめちゃなエピソードが続く「ドン・キホーテ」ですが、バレエ「ドン・キホーテ」の主人公であるキトリやバジルたちはなかなか登場しませんね。 実は「ドン・キホーテ」には前編と後編があり、キトリたちのお話は後編でようやく出てくることになります。 次回の投稿では、バレエ「ドン・キホーテ」にも出てくるエピソードを交えながら、ストーリーのお話をしていくことにいたしましょう。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 毎日、暑い日が続いていますが、梅雨が明けてからは、夕闇迫る空の美しさに、レッスンを中断してまでも子どもたちと「空がばら色できれいだね~」とか「あのマンションの窓がキラキラしているね!」と、その感動を共有する日々です。 池上校の土曜日クラスは朝からレッスンをしているので、それは叶いませんが、春霞のかかった空にも似たレッスンスカートを着用するなどして、子どもたちの繊細な感性に少しでも良い影響を与えられたら…と考えております。 さて、新宿マルイ本館にて、会期の延長と共に第3弾の展示が行われることになった「Ballet Authentic」のコピーを、皆さま覚えていらっしゃるでしょうか? 「一世紀先も、美しい」です。 ではここで皆さんに質問です。
「美しい」とは何でしょうか? 辞書で「美しい」をひいてみると「色・形・音などの調和がとれていて、快く感じられる様」とあります。 ですが「調和」や「快く感じられる」という表現は、少し曖昧かもしれませんね。 たとえば木村のレッスンスカートは薄いピンクを上の段に、薄いパープルを下の段にすることで、ピンクの軽やかさや甘さだけでなく、パープルの持つ奥行きや落ち着きを加えています。これがパープルが上の段で、下の段にピンクを重ねていたら、また違った印象になることでしょう。 「調和」については、古代ギリシャ時代から人々によって理想とされ、求められてきました。 その分かりやすく、代表的なものと言えば「円」や「球」ですね。 円はどこまでたどって行っても終わりの来ない、(半)永久的な図形ですし、球はどこを切っても(真っ直ぐ切る限り)その切断面は円を描きます。 その調和の取れたものを「快く感じられる様」が「美しい」ということは、実は、それらのものごとを個々の人々が「快く感じられる」かどうかにかかっていると言っても過言ではありません。 先ほどのスカートの色味の例で言えば「薄いピンクとパープルなんて!黒と蛍光オレンジの方が良いわ!」と言う人もいるかもしれません。 それは「どちらが良い」ということではなく、「快く感じられる」色の組み合わせが、木村とその人とで異なる、ということです。 それは個人個人が、どのような体験をし、それを周りの人々とどのように共有し、それをどのような気持ちで受け止めてきたか、によります。 その結果として、薄いピンクとパープルが快く感じられる人と、黒と蛍光オレンジが快く感じられる人とになっていくのです。 ですが、近年ではこの「快く感じられる」こと、つまり「美しい」をキャッチするためのアンテナが機能しづらくなっている人を多く見かけるようになりました。 「すごい」、「やばい」、「かわいい」という非常に限られた語彙のみで、自分の体験を片付けてしまい、またそのような感じ方で自分の周りを見るために、数値的な分かりやすいものや、それこそ「すごい・やばい・かわいい」ものにしか「快く感じられ」なくなっているように見受けられます。 日本語に限らず、「美しい」につながる「快く感じられる様」を表す言葉や表現は、私たちの周りに豊かに在りますから、それを感じ、表現出来るようになれたらと思います。 次の機会に、この「美しい」を感じられる心と「共感」の関係についてお話出来たらと思います。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 真夏日が続いていますが、体調を崩している人はいませんか? 特に熱中症は脳へのダメージが残りますから、感染症対策をとりつつも上手に深呼吸(鼻から息を吸うと脳の温度を下げることが出来ます)をしたり、頭を冷やしたりしてくださいね。 お医者さんからの「熱中症は生卵がゆで卵になるのと同じで、一度ゆで卵になってしまうと冷やしても生卵には戻らない」という言葉に、改めて、生徒の安全を守りつつ、効率の良いレッスンを提供しなければ…と思います。 さて7月からレギュラークラスとなりました、池上スクールの土曜日クラスでは、小さな生徒さんが一生懸命にレッスンに取り組んでいます。 この年齢で必要なことは、以前にも「幼児期に身に付ける36の動き」でもお話しましたが、様々な動きをたくさん経験することです。 バレエにおいて「正しいポジション」を目指すことは必須ですが、「ポジションはムーヴメント」の回でお話したように、ポジションが単なる形になってしまうと、その形にはめ込むことは出来ますが、踊りに必要な運動性が低下してしまいます。 かつてはそれでも動けてしまうほどの運動性を持った人のみがダンサーの道を志すことが出来ましたが、科学や医療などの発達した現在では、本当のバレエを目指す人が挑戦し続けられるような、知識やトレーニングが広まってきました。
それらをどこまできちんと実施するか、こつこつと継続するか、などは生徒のみなさんの問題になりますが、講師としては出来るだけ多くの方にバレエをはじめとする芸術を愛し、触れて、取り組んでいただけるように、工夫をしてまいります。 そして生徒さんはもちろんのこと、保護者の皆さまとの対話もとても大切なものだと考えております。 バレエに出会ったきっかけや、習おうと考えた理由、だけではなく、生徒さんの成長につながるたくさんのヒントを、対話の中から見つけ出すことで、身体的に、だけでなく心の成長にも負担なく健やかに伸ばしていきたいので、バレエにおいて気になることや不安なことなどがあれば、いつでもご相談いただければと思います。 (クラスの入れ替えなどでばたばたしている時にはメモなどでお知らせいただければと思います。) おまけ:クラスが終わり、お母さまが玄関にいらした瞬間に「ママー!」と嬉しそうに駆け寄る生徒さん。一瞬にしてリトルバレリーナのお顔から、一人のお子さんの顔に戻ります。バレエの習得も大切にしつつ、そのような子どもらしい様子にも立ち会える機会を嬉しく思います。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 あっという間に梅雨が明け、暑い日々が始まりました。 三田スクールでは8月11日の発表会を前に、レッスンへの熱も増していると思いますので、水分補給をしっかりしながら、体調管理に気を配りましょう。 また今月からスタートする池上校でも、適宜エアコンを使用しながらレッスンを進めてまいりますが、飲み物の持参の他、のぼせやすい生徒さんは保冷剤や、濡らすと冷たくなるタオルなどをお持ちくださいね。(体験レッスンへお越しになる皆さまにもお願いいたします。) また、寝苦しい夜も多いかと思いますが、睡眠不足は体調不良やケガの原因となりますから、生活のサイクルを整えて、それでも体調が優れない時には無理をせず、レッスンをお休みしてください。 さて、皆さんは新宿マルイ本館で行われている写真展の内容が新しくなっていることをご存知ですか? 今回のお写真は、同じくマルイ本館の8階から階段を使ってあがることの出来る屋上庭園「Q-COURT」で撮影されたものです。 この「Q-COURT」は小さなお庭ですが、都心ではなかなか味わうことの出来ない、解放感のあるスペースとなっています。
木村が訪れたのは夕方でしたが、落ち着き始めた日差しの中でくつろぐ人々の姿が印象的で、地上の騒がしさから少し離れてのんびりと緑を楽しむことが出来ました。 食べ物や飲み物(アルコールを除く)を持ち込むことも出来るので、お出かけのひと休みにふらっと立ち寄っても良いかもしれませんね。 その際は帽子や日傘などもお忘れなく!(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 前回の投稿では「真夏の夜の夢」のあらすじの前半をお伝えしました。 いたずら好きの妖精・パックが、余った「惚れ薬の花」をどうするのか?惚れ薬をまぶたに塗られた妖精の女王・ティターニアがどうなるのか?そしてヘレナ、ハーミア、ライサンダー、ディミトリアスの恋の行方は?…と、続きが気になってしまいますね。 森で落ち合うことになっていたハーミアとライサンダー、そしてそれを追いかけて来たディミトリアスとヘレナにも、パックはおもしろ半分で惚れ薬の汁をかけてしまいました。 この惚れ薬の効き目は「目覚めて最初に見た人を好きになってしまう」というもの。いったい誰から目を覚ますのでしょうか? そして、もうそろそろティターニアも目を覚ます頃です。 その時、芝居の稽古のために森にやって来たボトムを見かけたパックは、このボトムに魔法をかけて、頭をロバに変えてティターニアの前に連れて来ました。 「あら!何てすてきな人なのかしら?」目を覚ましたティターニアにはロバ頭のボトムを見つけて、すっかり恋に落ちてしまいました!美しい妖精の女王に出会って、ボトムもすっかり舞い上がっています。それを見た妖精の王・オーベロンもパックも大笑いするのでした。 ハーミアたち4人の中で一番はじめに目を覚ましたのはヘレナです。「まぁ!みんな、どうしたの?起きてちょうだい!」と声をかけました。 そこで目を覚ましたのはハーミアと恋仲のライサンダー、そしてディミトリアスの2人。目の前のヘレナを見て、2人は恋に落ち「ヘレナは僕のものだ!」と大喧嘩を始めてしまいました。 後から目を覚ましたハーミアは、恋人のライサンダーまでもがヘレナを追いかけている様子に大混乱。 人間たちの大喧嘩と、ティターニアたちの様子を見て、だんだんかわいそうに思えてきたオーベロンは、魔法を使って惚れ薬の効果を消しました。 その途端、目の前にいるロバ頭のボトムの醜い様子にびっくりしてしまったティターニアは大騒ぎ!喧嘩をしていたはずのオーベロンのもとに駆け寄り、仲直りを申し出るのでした。(急に嫌われてしまったボトムは、わけが分からずおろおろするばかり…) 大騒ぎしていた人間4人はハーミアとライサンダーが元の鞘に収まり、ヘレナとディミトリアスも結ばれて、晴れてめでたしめでたしとなりました。 翌日にはアテネ公・シーシアスとアマゾンのヒポリテとの結婚式とともに、ハーミアとライサンダー、ヘレナとディミトリアスの結婚式も行われ、にぎやかなお祭りとなったのでした。 「真夏の夜の夢」はメンデルスゾーンの作曲で、歌が付いていたり、ナレーション付きの作品もあります。 シェイクスピアの出身地であるイギリスではもちろんのこと、世界各地のバレエ団でも上演されていますが、前回の記事で載せたフレデリック・アシュトンの振り付けが有名ですね。 木村もヘレナとして参加したことがありますが、バレエの振り付けだけでなく、シェイクスピアの独特文体に触れることでも、大変興味深い体験をすることが出来ました! ぜひみなさんもシェイクスピアの作品を読んでみてくださいね。木村のおすすめは「十二夜」ですが、英語の原文で読むことでよりよくその魅力が分かると思いますよ。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 先日、6月21日は「夏至」でしたね。 1年のうちでもっとも明るい時間が長い日である夏至は、英語では「midsummer(ミッドサマー)」と言いますが、この言葉を聞いて「真夏の夜の夢」という作品を思い出した人も多いのではないでしょうか? 「A Midsummer Night's Dream(真夏の夜の夢)」は、イギリスの作家・シェイクスピアの書いた喜劇です。 今回の記事では、ストーリーについてお話してから、バレエ作品の「真夏の夜の夢」のご紹介をすることにいたします。 この物語には「妖精たちの世界」と「人間たちの世界」が登場します。 まずは「真夏の夜の夢」の喜劇的な部分の大半を担っている人間たちの世界の登場人物から見ていきましょう。 アテネ公・シーシアスとアマゾンのヒポリテとの結婚式が間近に迫っているある日、街の職人たちは、お祝いの場で披露する芝居の稽古のために、森へと出掛けることにしました。 同じ頃、相思相愛のハーミアとライサンダーは、ハーミアの父・イジーアスから結婚を反対され、「親の言うことが聞けない者は死刑」という古い習わしに従うか、ディミトリアスと結婚するかを迫られています。 一方、ディミトリアスに振り向いてもらいたいヘレナは、ハーミアとライサンダーが森で落ち合うことを聞いて、ディミトリアスもハーミアを追って来るに違いないと、2人のあとを追って森に向かうのでした。 その森の中では妖精の王・オーベロンと、女王・ティターニアが大喧嘩の真っ最中。原因はお小性の子どもをオーベロンが羨ましく思って、勝手に連れて帰ろうとしてしまったことですが、お互いに言い合いになって決着がつきません。 ティターニアに仕返しをするために、オーベロンはいたずら好きの妖精・パックに摘んでこさせた花の惚れ薬を、昼寝をしているティターニアのまぶたに塗るのでした。 自分のお役目を終えたパックでしたが、その手にはまだ惚れ薬の花が残っています。いたずら好きなパックが、こんなにおもしろそうなものを、そのまま片付けるわけがありません。さて、パックはこの惚れ薬の花をどうするのでしょうか?そして、ハーミアたちの恋の行方はどうなるのでしょうか? 長くなってしまったので、お話の続きは次の投稿で!(木村)
こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 先日投稿した新宿マルイ本館8階のイギリス式庭園「Q-COURT」へは、皆さん足をお運びいただけたでしょうか? 今回の投稿では、そのイギリス式庭園についてもう少しお話していきましょう。 「庭園」には「イタリア式庭園」「フランス式庭園」「イギリス式庭園」などがありますが、それぞれに特徴があります。 イギリス式庭園は「自然風景式庭園」とも呼ばれ、「フランス式庭園(整形式庭園、平面幾何学式庭園)」の要素と相対するものとして考えられています。 フランス式庭園は、国王シャルル8世がイタリアを訪れた際に、その様子に感動した「イタリア式庭園」を、フランスの土地に応用したものを作らせたと言われています。 ヴェルサイユ宮殿の庭園に代表されるように、左右対象に木々や彫刻が配置され、噴水などが「時間の経過に関わらず不変なもの」を表しているとされています。 もちろんその左右対象の中にも、遊びとしての差異があり、それが個性や特徴になっていることを考えると、まるでバレエのポジションやムーヴメントのようですね。 一方のイギリス式庭園は、自然の曲線を取り入れたもので、噴水よりも池や小川などが用いられ、自然の風景のように作られる庭を指します。 自然の景色が区画ごとに分割されたり、突然その様子を変えることのないように、イギリス式庭園でも「すべての点で自然を念頭におくこと。土地の精霊に相談せよ」と言われる作庭を目指して行われました。 この「土地の精霊」という言葉は、先の投稿でご紹介した「真夏の夜の夢」に出てきたたくさんの妖精や精霊を思い起こさせますね! このイギリス式庭園は自然の美、つまり不規則であることや絶え間なく変化することの美しさを表して、後年イギリスの美的感覚にも影響を及ぼすようになります。 イギリス式庭園で特徴的な「ha-ha」は、敷地内で飼っている羊などの家畜が、庭園の植物を食べたりしないように作られた石垣ですが、これも人間側から見ると芝生に溶け込んで、いかにも「人工物」が無いように見せていますね。 日本でも流行している「ガーデニング」は、「イングリッシュガーデン」のことを指しますが、これも「自然に見えるように」設計することが大切ですが、ここでのポイントはあくまでも「自然」ではなく「自然的」であることです。 以前の投稿で、バレエでの表現が、たとえ自然な感情から導き出されたものであっても、それが今の自分たちが感じるような「自然」さであってはならない、ということをお話しました。 また、その表現の空間性や時間性は、バレエが生まれ、また育ってきた時代や文化を反映するものである、ということもお伝えしました。 スタニラフスキーのメソッドが一般的になってから(スタニラフスキーについてはまた別の記事でお話いたします。)、具体的にその場の状況や、行動、それに対する感情などを掘り下げていくことが重要視されるようになりましたが、それは今の自分の感覚に寄せるということではありません。 舞台の上で踊り、芝居をし、お客さまに「何か」を伝えるためには、文化や思想を学び、正確な「型」という共通語を用いて、それを踏まえた上でストーリーや役柄としての自分を「作庭」していくことが大切なのです。(木村)
こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 太陽が顔を見せてくれる日もありますが、やはり毎日湿度が高くむしむしと暑い日が続いていますね。 この時期は食べ物が傷みやすく、食中毒に注意しなければいけませんが、実は筋肉や関節にも好ましいとは言えない季節です。 冷たい飲み物をガブガブ飲まない、小麦粉や白いお砂糖など水捌けを妨げる食材を避け、消化の良い食事を心がけるとともに、この暑さで身体もダメージを受けていますから、(寝苦しい時もあるかと思いますが)寝具を整えるなどしてしっかり睡眠をとるようにしましょうね。 前回、前々回と「スポーツにも活かせ」るトレーニングのワークをお伝えしてきましたが、今回は立位(立った状態)でのワークをご紹介します。 立位でのワークは、身体の弱い部分に負担をかけたり、苦手な動きなどからけがをしたり、傷めたりしやすいので、これまでのワーク以上に指導者の管理の下で行うようにしてください。 ①肋骨ほぐし これまで脊柱や肋骨についてお話をしてきました。この肋骨ほぐしでは、より立体的に、かつダイナミックに動かしてみましょう。 ②切り返し 素早い動きは、ただ単に「動きのスピードが速い」ということではありません。「身体のどこから動き出すのか」を意識すると、速度や重さを変えることが出来ます。 ③スパイラル・レッグ バレエでの動きはアンデオール(外旋)がメインですが、可動域をひろげるためにはアンデダン(内旋)が効果的です。また速度を上げることで、体幹への効果も期待出来ます。 ④胸椎モビリティ これまでゆるめたりほぐしたり、ストレッチをしてきた胸の背骨(胸椎)に速度と運動性を加えていきます。下半身の安定感がないと、支えの少ないウエストに負担がかかってしまったり、肋間神経痛になってしまうこともあるので気を付けましょう。 ⑤マエケン体操 これは野球選手・前田健太さんが試合前に行っているのを見たことがある人も多いでしょう。これは肩を回しているように見えますが、肩だけを回すと肩を傷めるので要注意!ここまでのワークを思い出せば、何のために、どこを動かすかが分かるはずですね。 ⑥スパイラル・パンチ 背骨から腕を動かす、連動性を高めるワークです。ポール・ド・ブラが「小手先」になってしまう人はぜひお試しください。 ⑦タンデム・ポジション 下半身が安定した状態で、上半身やアームスが動かせるようになったら、足を前後にして立つ「タンデム・ポジション」で動いてみましょう。もしかしたら皆さんを悩ませる課題のひとつであるかもしれないアンデオールですが、逆にアンデオールしないと上半身の動きに対して、脚が堪えられないことが分かるかと思います。
これらのワークはサッカーやバスケットボールなど、動きながら手を使うようなスポーツのために使えるだけでなく、同じように身体の各パーツを運動性によってコーディネートするバレエでも活かせますから、ご興味をお持ちの方はぜひ池上校スタジオで、木村にお声がけくださいね!(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 いよいよ7月からスクールが本格始動いたします。 今後も体験レッスンは随時受け付けておりますし、6月は幼稚園や小学校もイベントが少し落ち着くかと思いますので、お問い合わせなどお気軽にお寄せください。 先日の体験レッスンで入会されたベビークラスの生徒さんが、一足先に通常クラスを受講してくれたので、その様子をご紹介いたします。(お写真の許可をいただいております。) 幼稚園児が50分のレッスンを集中して受けるのは、とても難しいことです。 一般的に大人の集中力は50分、子どもの場合は幼児期で年齢×1分、小学校低学年で15分、高学年になってようやく30~45分ほど継続出来ると言われています。 これは「楽しい」という気持ちの持続性や、「ねばならない」の重要度、そして脳で処理する情報の量や、処理速度なども関係していると考えられています。 最近では大人でも「楽しい」の種類が「一時的な楽しさ」、「ワイワイする楽しさ」、「思い通りになる楽しさ」にしかアンテナの働かない人がいますが…特に子どものうちは「自身の課題に取り組み、クリアする楽しさ」に出会うまでの間をどのように過ごすかが大切になってくると思います。 その短い集中の中に、子どもたちの「楽しさ」の種類を増やす取り組みと、その感覚を繊細なものにしていく取り組みと、一方でバレエのレッスンとして「バレエ以前の」身体機能向上の土壌を整えることを平行して実施することは、大変なことでもありますが、子どもたちの可能性に触れることの出来るわくわくした時間でもあります。 「バレエを教えるだけなら、誰でも出来る」という先人の言葉の重みをしっかりと感じながら、臨機応変に、かつ(当然ですが)その場しのぎではない、もしかしたら大人になるまでバレエを愛し続け、取り組み続けてくれるかもしれない子どもたちに、必要なサポートを必要な分だけ、心を込めて手渡していけたらと考えております。 「必要なサポートを必要な分だけ」。
これは本当に難しいことですが、十分な雨が降らなければ、山に水が湧くことはありませんし、十分な湧き水がなければ豊かな川も、豊かな海も叶いません。 ですから、ベビークラス、プレエレメンタリークラスでは特に水が自然に湧いてくるまで雨を降らせ続けます。 かと言って、温暖化で氷の多く解けた海から発生した水蒸気が、必要以上の雨になって人々を苦しめたり、逆に必要な場所に雨が届かない…というようなことのないようにしていきたいと思います。(木村) |