こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 いよいよ6月となりましたね。 梅雨入りまでのしばらくの間、初夏の爽やかなお天気を存分に楽しみたいものです。 ただ、この時期の日差しに含まれる紫外線は(太陽の高さの関係から)実は夏よりも多いので、紫外線対策をきちんとして、また食事や睡眠などの体調管理を心がけて、身体に余計なダメージを残さないようにしましょう。 さて、昔から日本では「6才の6月6日に稽古事を始めると上達する」ということが言われてきました。 これは能の世阿弥(ぜあみ)という方の記した『風姿花伝(ふうしかでん)』という本に、次のように書かれていることから、そのように考えられているようです。 習い事は数え年7才頃から始めるのが良い。 この頃の稽古は子どもたちが自然に行うことの中に生まれ持った美点が見えてくる。 舞いやその所作などにぎこちないところがあっても、子どもたちが何気なくやり始めたら、まずはその子の心のままに、やりたいようにやらせてみることが大切。 さらに世阿弥は次のように語ります。 あまりに細かく、これは良い、これは悪い、と教えすぎたり、注意し過ぎてしまっては、子どもたちもやる気を失い、子どもたちの脳が止まってしまうだろう。 さらに言えば、子どもたちにはもっぱら基本動作以外の練習をさせるべきではなく、舞台で演じる時は、子どもたちにふさわしい場面で、子どもたちの得意なこと(演目)をさせる方が良い。 込み入った物まねは、たとえ子どもたちが出来たとしても、教えるべきではない。 世阿弥が生きたのは室町時代ですから、ちょうどバレエがパフォーマンスとしてその形をまとめ始めた頃ですね。国が違っても、パフォーマンスのジャンルが違っても、人々の芸術や芸事に取り組む情熱は変わらないようです。 スケジュールの関係で「6月6日」とはいきませんが、みなとシティバレエ団附属池上バレエスクールでは、6月11日(土)に、イベント付きのレッスン体験会を開催いたします。 30分の短いレッスン体験と、バレエ衣裳の試着とお写真が撮影出来る「フォトタイム」を予定しておりますので、ぜひ池上校スタジオへ足をお運びくださいませ。 またすでに6月4日(土)にも、通常レッスンへの体験のお申し込みをいただいております。
何かを始める時には、わくわく感よりも、緊張と不安が大きいかと思いますが、ぜひ一度レッスンを体験していただき、ご不明点や疑問点などもお問い合わせいただければと思います。 おまけ:体験レッスン当日は動きやすい服装(Tシャツ、スパッツ、短い靴下など)でお越しください。髪の毛の長いお子さまは、髪の毛がお顔にかからないようにまとめておいていただければと思います。またご希望の方は、事前の申し込みで、写真のようなレオタードを貸出しすることも出来ますので、お気軽にご相談ください。(木村)
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こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 先日の「トレパック」の踊りは楽しく踊れましたか? 一言でロシア、と言ってもその国土は広く、様々な文化、言語、そして踊りが伝わっています。 みなとシティバレエ団附属のスクールで学ぶ生徒の皆さんの中に、クラシックバレエだけでなく、そのようなキャラクターダンスや、宮廷舞踊をもとにしたヒストリカルダンスにも、興味や関心を持つ人が増えてくれたら嬉しく思います。 それは、踊りを通じて、お互いの文化の一端を体験することで、たとえ言葉は通じなくとも、お互いを受けいれて、認め合えるようになるのではないかという希望でもあります。 そして自身が文化理解について努力するとともに、そこで得たものを土台にして、また他の人が芸術をはじめとした文化に触れる機会を提供するというお役目を果たせる人になっていけば、少しずつかもしれませんが「それぞれが<より良く在る>ために努力する」という「多様性」の実現にもつながるのではないでしょうか。 さて今回は「白鳥の湖」の作品紹介でもお伝えした「ナポリ」の踊りから、簡単なステップを3つ覚えて踊ってみましょう! もしお家に「白鳥の湖」の「ナポリ」の音楽があるようでしたら、後半のアップテンポになる部分からが踊りやすいかと思います。 まずひとつ目は「パー、ケン、パー、ケン」です。 バレエのポジションを知っている人は「跳んで2番、跳んでクペ、跳んで2番、跳んでクペ」を繰り返しましょう。 慣れてきたらクペの軸足側に軽く頭を倒してみたり、軸足側で手拍子をすると、よりリズム感が加わり見ている人にも楽しさが伝わります。 ふたつ目は「ジュテ・ソテ」です。 「ジュテ(jetes)」は「投げる、放る」の意味で、足を横(または前や後ろ)に出してから、もう片方の足で踏みきって跳び上がり、放った方の足で着地します。 クラシックではきちんと身体のセンターに着地する足が来ることが大切ですが、ここでは少し放る足に注目してもらうように、軽やかに跳びましょう。 そして最後は回転です。 とは言っても、片足でトントントンとリズムを踏みながら、軽く跳ねるようにして、少しずつ方向を変えていく(一般的には90°ずつ)感じなので、ピルエットのようにくるくると回転するものとは少し違いますね。 出来る人はアティテュードで回転してみましょう。遠心力がかかるので、お尻が出ないように注意です! これを組み合せてみると…
「2番、クペ、2番、クペ、2番、クペ、2番、クペ」 「トントントントン(1回で90°方向チェンジ)」 「ジュテ・ジュテ・ジュテ・ジュテ」 これで8カウント2回分の音楽の振り付けが出来ました! (カウントについては、また別の記事でお伝えしますね。) どうぞ楽しんで踊ってみてくださいね! おまけ:昔のイタリアでは「毒グモに噛まれたら、解毒するために踊る」という不思議な治療法があったとか…今でもその踊りは「タランテラ」として残っています。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 これまでご紹介してまいりました「身体遊び」から、少し進んで、ストレッチやコントロールについて数回に分けてお伝えしていこうと思いますので、ぜひ皆さんもこつこつと続けてみてくださいね。 今回はお家で出来るトレーニングのご紹介です。 まずは自分の身長に合う椅子を用意します。 ここで余談ですが、皆さんは自分の身体に合った椅子を使っていますか? 足がぶらぶらしていたり、座面にお尻が沈みすぎたり、背もたれが遠いままにしていては、子どもの筋力では姿勢を保持することが難しく、姿勢が保持出来ないがゆえに集中力が保てなかったり、逆に姿勢を保持しようと身体を無理に力ませてしまう場合もありますから、今一度お家の椅子をチェックしてみてください。 そしてもし足がぶらぶらしてしまう場合は足の下に台を置く、背もたれが遠い場合はクッションを入れる…など、ひと工夫をしてきちんと座れるようにしましょう。 椅子に座る際に気を付けるのは「骨盤」、特に「坐骨」です。 坐骨は体操座りをすると、床に当たってゴリゴリする骨ですがこれは骨盤の一部分で、坐骨が正しく座面や床をとらえられているということは、骨盤の在り方が正しいことの目安となります。 そして骨盤が直接当たっている「座位」の状態で、骨盤の在り方や、そこからつながる背骨や頭骨までの並び方を覚えることで、「立位」に進んだ時にも、より良く立つことが出来るようになります。 逆を言えば、手足の形や「バレエらしいポーズ」にとらわれ過ぎてしまうと、骨の位置や並び方に良くない影響が出てしまいますし、またそれを力任せに「矯正」しようとすると、ますます動きにくく、美しくない状態になり、けがにつながる場合もあるので、地味な作業ですが、きちんと骨盤の確認をするようにしましょう。 安定して座ることが出来たら、首を傾げてみたり、横を向いてみたりしてみましょう。 無理なく、そして肩や骨盤がずれることなく、頭を動かすことが出来たら、背骨にフォーカスして縦、横、斜めに動かしてみても骨盤が安定していられるかどうか、など試してみてください。 ここで大切なことは「安定」は「固定」ではないということです。
安定とはどのように動いても、もとの姿に戻って来られるしなやかな強さのことであり、固定はそこを離れたらその役割やはたらきが出来なくなってしまうものです。 骨盤を土台にした上半身、特に胴体の安定感を得ることで、スムーズな脚の動きが向上していきますから、少しずつトレーニングをしていきましょうね。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 自分が「先生」という肩書きをいただいた日に、自分の師から言われた言葉があります。 「バレエを教えるだけなら、誰でも出来る。人を育てることが出来るようにならなければならない。」 これまでもお伝えしてきたように、バレエはその形が整ってから400年以上もの間、(医学や科学の発達によりテクニックなどの強度や、上演の技術は向上してきましたが)求められる美しさや目指す正解、いわゆる「バレエのイデア」は大切に守られてきました。 ですから、個人的な感性としての「好きか嫌いか」についての自由はありますが、「美しいか、美しくないか」、「正しいか、正しくないか」、「良いか、良くないか」がはっきりしていますし、だからこそ「バレエを教えるだけなら、誰でも出来る」と言われるのかもしれません。 もちろんその「バレエのイデア」は簡単に手に入るものではありませんし、それを他の人に伝えて、正確に実施してもらうこともとても難しいものです。 また「先生」と言う肩書きをいただいている以上、「バレエの世界で<先に生きている>人」として、常に自身の在り方に(良い意味での)疑いの目を向けて、「より良い」指導を手渡せているかどうかを見つめていなければなりません。 今回の記事では、その一回り外側の「子どもクラスと大人クラス」をどのようにとらえているかを、少しだけお話してまいります。 木村はバレエをお料理に例えることが多いのですが(以前にもオムレツのたとえ話をしたことがありますね)、これもお料理のお話でお伝えしたいと思います。 まずは大人の方にバレエを手渡す時ですが、大人の方にはそれまでの体験してきたことや、感じたこと、学んだこと、知っていること等が心身に積み重なっていて、それはその方のアイデンティティでもありますから、それらを大切にしていくことを念頭においています。 それはたとえば、木村が「オムレツを作る際には、たまご2個に対して、加えるミルクは50ccが美味しい」と思っていても、「70ccの方がフワッとする」と感じる方もいらっしゃいます。 また、「○○を少しだけ入れる」とか、泡立て方などについて、木村のまだ試したことのない方法を知っている方もいらっしゃいます。 そのような相手に頭ごなしに「木村のオムレツの作り方」を押し付けても、お互いに良い気持ちがしない上に、「より美味しいオムレツ」の可能性は消されてしまいます。 それらをふまえた上で、改めて共有すべきは「なぜより美味しいオムレツを作るのか?」ということです。 それは「お料理を召し上がる方に<美味しい>と思っていただきたい」から、ということになりますね。 バレエにあっては、そのために専門家である「先生」は、自分の中にある知識や経験をフル稼働させて、より良いクラスやワークを手渡しますし、生徒の皆さんにはそれらにトライしつつ、「先生」を刺激するような「何か」をさらに共有しながら、より良いバレエに手を伸ばして行ければと思います。 一方、子どもたちにバレエを手渡す場合には、体験や知識の部分への書き込みが少ないからこそ、「先生のバレエ」がどれだけ影響力を持つかをしっかり自覚して、クラスを行うことを心がけています。 先に書いたように、常に自身の指導方法や内容、また声掛けの仕方や、修正する際の手の触れ方にいたるまで、振り返り、最適化出来るように気を配るのです。 これはお料理で言えば、はじめて食べるオムレツが美しくなくて、化学調味料だらけで、盛り付け方も雑で、そしてそもそも美味しくなければ、「オムレツとはそういうもの」という書き込みがされてしまい、その人の「オムレツのイデア」は、その後ずっと「良くないもの」として定着して、もしそれを他の誰かに伝えるようなことがあれば、正しくない「オムレツのイデア」がひろまってしまうことになるのです。 これは、味覚やバレエだけでなく、立ち居振る舞いや、ものの考え方など、その人の「生き方」にも大きな影響を及ぼしますから、時間がかかってでも、手間がかかってでも、より良いイデアを手渡したいものですね。
おまけ:こちらの写真は木村がクラスを担当させていただいているお稽古場の一部です。ありがたいことにたくさんのご縁をいただいておりますが、今春からさらに加わった池上バレエスクールも含めて、今まで以上にしっかりと「より良いバレエのイデア」をレッスンで共有していければと思っております。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 まずはこちらの写真をご覧ください。 これをバレエ用語で説明すると、次のようになります。
「1stポジションのドゥミ・プリエ、右手をア・ラ・セゴンから横にカンブレ、右足を横にタンデュ、最後にドゥミ・プリエ」 声に出して読んでもわずか12秒ですし、この動きに合うレッスン曲(ゆったりとしたプリエの音楽)で実施しても60秒もあれば十分に足ります。 これを子どもたちに伝える時に、木村は200秒ちかく、つまり3分以上かけます。 びっくりする方もいらっしゃるかもしれませんね。 以前に「お手伝いのすすめ」でお話したように、子どもたちの情報の受容出来る量や範囲はかなり限られていますし、またその受容した情報を取捨選択する段取りも未発達です。 そのため、まずは実施する速度の2倍程度の時間をかけて、動きを視覚でとらえることに集中して覚えます。 次に、先に示したような「言葉での説明」を加えながら動きを整頓していきます。 その次に、今度は先生は動かずに、子どもたちが順番を「言葉で説明」していきます。 その際も、全てを言うのではなくて、先生との問答のように「次は何をどうする?」「右足を横にタンデュする」「何回かな?」「1回!」…と確認していき、そこでようやく音楽がスタートするのです。 バレエでは特に、身体の各パートに関する感覚、方向感覚、空間認知感覚は、子どもたちの「動けること」と平行して、きちんと整頓をしていく必要があります。 それは「回れるけれど行き当たりばったりな感じがする」、「跳べるけれどポジションがばらばら」、「脚はあがるけれど身体がつられてぐらぐら」…では、どのような時にも立ち居振る舞いの奥に必ず品格を含ませることを大切にしている「バレエ」からは離れていってしまうからです。 また、ポジションが正確なだけでは「私・昨日・行く・遊園地・乗る・ジェットコースター・楽しい」と話す感じで、どれだけその単語ひとつひとつを正確に発音出来ても、文章になっていませんし、相手にはその言葉しか伝わりません。 「私は昨日、遊園地に行って、ジェットコースターに乗りました。とても楽しかったです!」と伝えるには、以前の記事でもお話したように、たとえレッスンのムーブメントであっても「おしゃべりをするようにバレエを」することを心がけることが大切なのです。 お話をする時に緩急や強弱がつくように、シンプルに見えるバレエのレッスンでも、そのムーブメントの流れは単調なものではありません。 そしてそれを導くためにレッスン音楽があり、先生たちはいつでも丁寧に数あるレッスン曲の中から、動きと目的、そしてニュアンスなどがきちんと伝わり、子どもたちがそれらを身に付けられるように工夫しているのです。 もしそうでなければ、単純にポジションだけを覚えるのであれば、音楽はもはや「いらないもの」になってしまいますし、メトロノームでレッスンしても変わらない…というものになってしまうでしょう。 「そんなにじっくり伝えていたら、子どもたちは飽きてしまうのではないですか?」と聞かれることがありますが、今まで担当してきた生徒さんの中では、そのようなお子さんはいませんでした。 子どもたちの「やる気スイッチ」がうまく入り、「集中力のギア」が入れば、大人の心配は杞憂に変わるのかもしれませんね。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 以前、作品紹介で「くるみ割り人形」と「白鳥の湖」を取り上げた際、さまざまな国やお菓子の踊りを中心にご説明しました。 その中でも特定の国や地域の民族舞踊をとりいれた踊りを「キャラクターダンス(キャラクテール)」と呼び、日本ではまだまだ一般的ではありませんが、バレエ学校ではカリキュラムの1つとして必修科目となっています。 日本ではキャラクターダンスのクラスで学ぶのは、マズルカ、チャルダッシュ、タランテラ、スパニッシュの4種類が多いかと思います。 これらのダンスは、それぞれの国や地域の伝統舞踊や民族舞踊のエッセンスをとりいれつつも、あくまで「バレエの一部」としてとらえられ、また学ばれてきたということを忘れてはいけません。 まずは「キャラクターダンス」が形作られてきた歴史を簡単に見ていきましょう。 19世紀にフランス、スペイン、アメリカで、バレエダンサーとして活動していたマリウス・プティパは、その後ロシアにプリンシパル(主役を務める高位ダンサー)として招かれます。 その後、バレエ教師(メートル・ド・バレエ)としてロシア・バレエの発展に貢献したプティパですが、教師としてだけではなく振付家としても数多くの作品を手掛け、その多くは今も多くの人々に愛され続けています。 宮廷の余興としてバレエが踊られていた頃は、歌あり、セリフあり、踊りあり…という形で実施されていましたがプティパによってそこからダンスの要素と、マイムによる身体の動きによるセリフ的表現が抽出されていきました。 そしてダンサーであったプティパは、さらに技巧バレエとしての部分とマイムを分けて、特にダンスとしてのバレエを向上させようとしました。 その分、マイムやかつてはセリフで表されていた部分を踊りの構成から判断しやすくなるようにしたり、ダンサーそれぞれの技能をしっかりと見せる場面を差し込んだりと、作品構成そのものに工夫をこらすようになり、そのためのちに「バレエの父」と呼ばれるようになります。 そしてそれらの工夫のなかで、プティパは自分の得意としていたキャラクターダンスにも力を入れて、「ディベルティスマン」の1つとして、その見せ場を多く作っていくのです。 実はプティパは「あなたは脚の形が美しくないから、じっとしていない方が良い」と言われたために、足さばきや技巧を多く身に付けたとか…そして、マイム役者としても重用されていたことを考えると、その様々な要素に取り組んでいたそれまでのプティパの経験が「バレエの父」と呼ばれるようになった土台を作っていたのかもしれませんね。 もともとの民族舞踊は、地域の人々の団結や協力を導き、盛り上げるためのものでしたが、バレエでのキャラクターダンスには、民族舞踊の持つ独特のエッセンスや、そこから来る華やかさやエネルギーの表現が大切になってきます。
ですから、それぞれの型を学ぶためのバーレッスンやセンターレッスンはもちろん必要ですし、大切ですが、それ以上に上のような役割を果たせるように心がけていくと、クラシックとはまた違った喜びや楽しさを感じることが出来るのではないでしょうか。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 皆さまは、新宿マルイ本館にて開催中の写真展を体験されましたか? 時間を決めて、写真家とモデルのダンサーが在廊していますが、やはり週末はご来場の方が多く、なかなかゆっくりとお話をすることが難しい場合もあります。 平日も20:00までオープンしておりますので、落ち着いて作品をご覧になりたい方は、ぜひ平日の夜に足をお運びください。 先日は開店前のマルイ本館に、一足お先に入館させていただきました。 お客さまがいらっしゃる前の劇場は見慣れたものですが、デパートでそのような体験をしたのははじめてでしたので、わくわくどきどき… お店のスタッフさんと同じ通路を通って、たくさんのお洋服やお品物が保管してあるバックヤードを通って、キョロキョロしながら写真展の会場である4階に到着しました。 日頃、お買い物をしているフロアーの華やかでにぎやかな様子とは雰囲気が異なり、照明も最低限で物音ひとつしません。 ですが、その静けさの中にも「さぁ、これからお客さまをおむかえしますよ!」というような意気込みや、「お客さまが楽しんでくれますように!」というようなわくわく感が感じられて、その場にいる自分自身にもエネルギーが満ちていくような気がしました。 それは、きれいに並べられたたくさんのお品物からはもちろん、それを前の日にきちんとディスプレイされているスタッフさんのお気持ちが、その空間に満ちていたからかもしれません。 そして、写真展の会場もレセプションの時とは、レイアウトを変えて、より多くの方がゆったりと展示を楽しめるようにしてあり、こちらも「皆さまがすてきな時間を過ごせますように!」という空気感が漂っていて、とても心地の良いものになっていました。
お店にしても、展示にしても、もしかしたらパフォーマンスにしても、長い期間を過ごしたり、同じことを繰り返していると、慣れが出てきたり、ほんの少しの気のゆるみから見落としをしてしまうこともあるかもしれません。 ですが、それが積み重なっていったら、どうなってしまうでしょうか? 以前、お店の方とお話をさせていただく機会があったのですが、印象的だったのは「常連のお客さまにしても、その時偶然にご来店いただいた方にしても、<いま、ここ>で出会い、同じ時間を過ごすのは<いま、ここ>でしかありません。だからこそ<いま、ここ>を大切にしています」という姿勢でした。 これは、私たちアーティストが舞台やパフォーマンスにかける想いとまったく同じですし、また私たち講師がクラスにかける想いとも通じるものがあり、お仕事は違えども深いところで繋がっているのだな、と感激しました。 そして改めて、自分が「お客さま」としてお店や、劇場に足を運ぶ際には、パフォーマンスに関わる人々やスタッフさんとも、より良い<いま、ここ>を共有出来るような、より良い自分で在りたいと思いました! 日々のレッスンを頑張っている生徒の皆さんも、どうぞ<いま、ここ>に慣れることなく丁寧に積み重ねていきましょうね。(木村) 池上でバレエをするなら! こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 ゴールデンウィークもあっという間に終わり、6月が過ぎれば2022年も半分が過ぎたことになります。 新型コロナウイルスの感染状況については、まだまだ油断が出来ませんが、それでも今年は昨年以上に活動し、自身の成長の成長や、人のお役に立つことに取り組んでいけるよう、毎日を丁寧に過ごして行きたいですね。 さて、皆さんは登山をしたことがありますか? 関東圏に住んでいる人であれば、遠足で高尾山や筑波山などの低い山に行ったことがあるかもしれませんね。 どれだけ低い山だったとしても、山に登る時にはきちんとした準備が必要です。 歩きやすく滑りにくい靴や、草葉で怪我をしないための長いズボン、急な雨をしのげる折り畳み傘やウインドブレーカー、万が一帰れなくなった時のための非常食、応急手当の出来るセット…等々、少し心配性過ぎるかな?と思っても、何かあった時に「持ってきておけば良かった」とならないために準備をしておくと良いでしょう。 また、少しでも高い山に登る時は、事前に必ず登山計画を提出してから入山します。 これは万が一、山で遭難したり、怪我をして山を下れなくなった時に、救助に向かう人々がその人を探しやすくするためと、救助者自身が辺りをやみくもに探し回って二次被害を起こさないようにするためです。 今日のタイトルである「山に登る」では、まず「準備の大切さ」についてお伝えしています。
バレエで言えば、骨や骨格がしっかりしていない、または筋肉が十分育っていない状態で、無理なテクニックを押し付けたり、トゥシューズを履かせるなど、「現状をきちんと把握していない」とか、「リスクマネジメントが出来ていない」こと、などが準備不足にあたります。 また情報処理や気持ちの整理の付け方において、まだ経験の少ない子どもたちに、精神論(根性論)を押し付けてしまうことなども、より良い準備が出来ているとは言えないでしょう。 その一方で、「遭難したらどうしよう」とか「怪我をして山を降りられなくなってしまったらどうしよう」と、心配してばかりいては、山で体験出来るはずの豊かな自然や、森の香り、小鳥のさえずりや、せせらぎの音、木々の間から差し込む光や、休憩の時のご飯の美味しさ、そして頂上の展望台まで来た時の「やったー!」という気持ちは、ずっと味わえないままになってしまいますね。 きちんと準備が出来たら、勇気を出して最初の1歩を踏み出してみましょう! バレエでは自身の経験と、十分な学びを得た先生が、いつも皆さんを見守っています。 先生達が「大丈夫、やってごらん!」と言う時には、どうぞ勇気を出してトライしてみてくださいね。 たとえそこで上手くいかないことが出てきたとしても、皆さんが「遭難」しないように、先生たちはいつでも手を差し伸べる準備は出来ていますし、そこからまた学びを得た皆さんは、その経験を活かして「次の登山」に向けて、しっかりと準備をすることが出来るようになるはずです。 より高い山にチャレンジするもよし、ゆっくり景色を楽しむもよし、これからもそれぞれのペースで進んでいきましょうね。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 今回の「○○に行こう」は「劇場に行こう」の第2弾で、「座・高円寺」をご紹介いたします。 名前にもある通り、高円寺の駅から線路沿いに5~7分程歩いた所にある劇場で、今回は地下2階の「座・高円寺2」を訪れました。 外観は平屋風で、丸い窓がたくさん付いていて、外壁の色味もあいまって、何となくてんとう虫のようなかわいらしい感じの建物です。 設計を手掛けたのは、串田和美さんが芸術監督をつとめている「まつもと市民芸術館」の設計でも有名な、建築家の伊東豊雄さんです。 ちなみに木村が串田和美さんのお名前を知るようになったのは、歌舞伎の中村勘三郎さんが、古典歌舞伎の新解釈作品を多く上演するようになってからのことで、それまでは現代劇の方については知識がありませんでした。
舞台監督の方とお話をする度に、アドバイスをいただきますが、特にバレエの人たちはもっともっと多くの作品に触れたり、学んだりしていかなければ、そしてその上で「バレエとは何か?」を考えなければならないと思います。 そして「座・高円寺」の芸術監督は佐藤信(まこと)さんで、この方は、それまで「世田谷パブリックシアター」の芸術監督も務められました。 こちらも大好きな劇場なので、またいつかお話出来ればと思います。 さて、中に入ると、てんとう虫の窓からたくさんの光が差し込み、いよいよ劇場にやってきたなという気持ちになり、階段を降りながらだんだんと作品観賞への心の準備が出来ていくようです。 階段の踊場には壁一面に今まで上演されてきた作品のポスターが貼られていたり、地下のロビーにはたくさんの絵が展示されていたりして、劇場の懐の深さや、歴史を積み上げていくことの大切さを再確認しました。 そして「座・高円寺」には、演目によって自由に舞台・客席の形状を変えることが出来る「座・高円寺1」や、有名な「高円寺阿波おどり」の普及を目的とした「阿波おどりホール」もあり、人々が劇場を身近に感じられる素敵な場所でした。 こちらにはアーカイブを見ることの出来る資料室や、「ファーブル昆虫記」のアンリ・ファーブルの名を冠した喫茶室も併設されているので(やっぱりてんとう虫なのでしょうか?)、ぜひ皆さんも一度訪れてみてくださいね。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 皆さんはハンス・クリスチャン・アンデルセンという作家を知っていますか? もし彼の名前を聴いたことがなくても「人魚姫」、「マッチ売りの少女」、「みにくいアヒルの子」、「雪の女王」、「親指姫」、「はだかの王様」、「赤いくつ」、「パンを踏んだ娘」などなど、皆さん一度は彼の書いたお話を読んだり、聞いたりしたことがあると思います。 今回は「えんどう豆の上に寝たお姫さま」という作品をご紹介しましょう。 昔々あるところに一人の王子さまがいました。 王子さまは結婚してお妃さまになってくれるお姫さまを探していましたが、そのお姫さまは「本当のお姫さま」であってほしいと思っていました。 ある日、お城にびしょ濡れになったお姫さまが「私は本当のお姫さまです。どうかお城に入れてください」とやって来ました。 王子さまは彼女の身なりから、本当のお姫さまかどうか分からずにいましたが、その晩、お姫さまに貸したベッドに一粒のえんどう豆を置き、その上から20枚の敷き布団と20枚の羽布団をかけておきました。 翌朝になって「昨日はよく眠れましたか?」とたずねると、そのお姫さまは「ベッド下に何が入っていたのでしょう?何か固いものが当たって一睡も出来ませんでした。」と答えました。 王子さまは「こんなに繊細な人であれば、本当のお姫さまにちがいない」と、そのお姫さまに結婚を申し込んだのでした。 バレエには決められたポジションや、動き方のルールがありますが、これは王候貴族が、その立ち居振る舞いをエレガントに見せるための教養やマナーから出来上がって来たものだと考えられています。
特にその時代のバレエは、その王候貴族達が考える「世界」の中だけでイメージされ、作られてきましたから、地位や権威、そして何よりも「王が王であるような」エレガントな美しさが求められていました。 そのような王さまや王妃さま、王子さまやお姫さまであれば、本来は心身ともに繊細な感覚や、深みのある思考や、国や領地を代表し、有事の際には自身の民を守る強さを兼ね備えているべきかと思います。 この「えんどう豆の上に寝たお姫さま」ではその繊細さにフォーカスをあてて物語にしていますが、王候貴族たちの文化から生まれたバレエを習ったり、学んだり、踊ったりする私たち、そして時には舞台の上でお姫さまそのものとしてお芝居をする私たちには、この繊細さが必要だと思います。 バレエのポジションや形だけにとらわれてしまうのではなく、その奥にある「本当の美しさ」を見つめたり、小さな筋肉や関節の調整をしながら、「本当のバレエ」に手を伸ばし続けたいものですね。(木村) |