こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 「with コロナ」が浸透して久しいですが、ようやく新型コロナウイルス感染症も落ち着きを見始め、今年のゴールデンウィークは久しぶりのお出かけを計画しているお家も多いのではないでしょうか? まだまだ予断は許しませんが、感染症対策を心がけながら、少しずつ「心を豊かにする」環境に再び足をむけても良いかもしれませんね! 今回の記事では上野の「東京国立博物館」をご紹介します。 上野駅から徒歩で数分、都内であることも忘れてしまうほど、緑の豊かな広い敷地に、本館・東洋館・平成館・表慶館・法隆寺宝物館などが並び、その様子は圧巻です。 木村も子どもの頃から何度も足を運んで来たこちらの博物館ですが、大人になった今も、やはりわくわくとした気持ちでその門をくぐるのです。 コロナの影響で、体験型の展示が姿を消してしまったことは残念ですが、たくさんの歴史的な遺物や、美術品を前にすると、はるか遠い時間を経て「今、ここ」で自分たちと同じ時空間を共有していることに感動を覚えます。 近年、特に思うのは、大昔の人々の技術のすごさ以上に、当時の人々も、今の私たちと変わらず毎日を生きていたということと、どの地域、どの時代でもすべては大きな歴史の一部であり、「大切でない」ものはひとつもないということです。 どの文化も(時の権力者が私利私欲にかられたりしない限りは)豊かで、知性と美しさをひめており、それが何百年も、時には何千年も昔に生み出されたものであることに、改めてびっくりしてしまいます。 またもう一点は、これは博物館に限ったことではありませんが、今回久しぶりに博物館の中に入り、展示物と対峙した時に、「その空間に身を置く」大切さを再確認出来ました。 特にこの博物館は長い歴史に培われた「薫り」とでも言えるような「何か」を内包しており、それは「その空間に身を置く」ことでしか体験出来ません。 これはどんなにデジタル技術が発達しても、再現出来ないものだと思います。 上野には国立博物館の他に、国立科学博物館、国立西洋美術館、そして木村も何度かそこに立たせていただいている東京文化会館など文化施設が多くあり、大好きな地域です。 「○○に行こう!」シリーズでは、上野に限らず、これからも皆さまに「心を豊かにする」場所についてお伝えしてまいりますので、どうぞお楽しみに!(木村)
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こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 皆さんはご自宅でどのように座っていますか? ダイニングテーブルの椅子、ソファー、畳の上に正座、という人もいるでしょう。 「正しい姿勢で座りましょう!」と言われることは多いですが、それは具体的にどのような座り方なのでしょうか? そしてその理由についても考えてみましょう。 そもそも「正しい姿勢」とは何でしょうか? 以前の投稿でお話したように、人間の背骨には「S字カーブ」があり、肋骨との組み合わせで内臓を守るカゴとしての役割を果たしたり、足から伝わって来る衝撃から背骨がダメージを受けるのを緩和してくれます。 上記の理由のため、このS字カーブは地面に対して垂直に、しかも2本の足で立つ生き物にあらわれ、猫などの四つ足の動物にS字カーブはほとんど無く、水中で暮らす魚の背骨はほぼまっすぐになっています。 そして、お母さんのお腹の中で羊水に浮かんでいた赤ちゃんにはS字カーブは無く、丸まった「C字カーブ」の状態で生まれ、座るようになってから首回りの前カーブが出来て頭を支え、立って歩くようになってから腰周りのカーブが形成されていくのです。 いわゆる「正しい姿勢」の分かりやすい目安としては、耳・肩・股関節・膝・外くるぶし(座っている時は耳・肩・股関節)が一直線に並んでいること、というものがありますが、実際の股関節の位置はレントゲンを撮ったり、運動の様子を確認しなければ分かりません。 特にバレエのような「審美系」のジャンルでは、「体型」と混同されてしまうことも多く、「正しい姿勢」が運動性と審美性とともにきちんと評価されているかを確認することが大切ですし、またトレーニングでの局所的な視点で考える時と、造形として全体的に考える時とで、指導者の知識や考え方からの影響を受けることを覚えておかなければなりません。 そのようなこともあり、今回の記事では座り方に限定してお話しますが、まず大切なことは「足の裏がしっかりと地面についているかどうか」を確認することです。 座面に対してお尻(と太ももの裏側)は、ただ乗っているだけで、その接地面は土踏まずと地面との関係のようにはなっていませんから、坐骨の出っ張りやお尻の丸さなどの不安定さから上半身に余計な緊張をさせないためにも、足の裏でも安定感を出してあげることが大切です。 また、これも先の投稿でもお伝えしましたが「背骨はまっすぐにはなりません」。 もし直立姿勢にあって背骨がまっすぐになると、重たい頭を支えることは出来ず、内臓をしまう肋骨のカゴはつぶれて、肺の上半分が効率よく使えなくなり(あくびが出やすいお子さまに多い)、骨盤の傾きが不自然なものになり、股関節から下の動きがギクシャクしてしまいます。 そこから逆に考えて「正しい姿勢」は、重たい頭を支えることが出来、肋骨のカゴが内臓をしまうことが出来て(そこには横隔膜も一役かっていますね)、呼吸が効率良く行われ、骨盤が安定している座り方であると言えます。 木村も小さい頃「テーブルに肘をつかない!」、「背もたれに寄りかからない!」、「足をぶらぶらしない!」と言われてきましたが、すべてに理由があるのだなぁと再確認しています。 ちなみに肘をついて、他の部分から力を抜いてしまうと、肋骨と骨盤をつなぐ胴体の筋肉が働かなくなって、ますますだらしのない姿勢になってしまいますから、もし肘をつく場合は背中が丸まらず、また肩が上がらない高さのテーブルを用意して、前鋸筋にも刺激が入る状態にしておくと良いかもしれません。 木村のクラスでは小学生になると、椅子に座ってのトレーニングも加えていきます。「より良く」座れるようになると、呼吸も安定するので、脳への酸素供給も滞らず、集中力が高まるので、ぜひお家でも座り方を気にしてみてくださいね。(木村)
こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 日頃より、当ブログをご覧いただきまして、ありがとうございます。 今回は、いつもと趣向を変えて、スクールの紹介をしたいと思います。 池上バレエスクール、姉妹校の三田バレエスクールは、みなとシティバレエ団附属のバレエスクールです。 みなとシティバレエ団は、日本のバレエ団(職業的バレエ)で「当たり前」とされていた様々なシステムを見直し、職業としてバレエに携わる人々が、本当の意味で「ひとりのアーティスト」として「自立」出来る環境を整えるために設立されました。 その実現のためには、バレエの社会的地位や、世の中における役割について、ダンサー自身が考え、自覚し、行動をしていくという「自律」が必要ですし、それによって得られた成果を社会に還元していくという働きかけが大切です。
まだまだ発展途上のバレエ団ではありますが、バレエの目標のひとつでもある「世界の果てまで芸術を」を実現するために、国内外での活動を継続してまいりました。 池上バレエスクール、三田バレエスクールの設立も、その活動のひとつで、ひとりでも多くの子どもたちに「バレエを通じて芸術に親しんでもらうきっかけを」、そして「芸術活動を通じて本当の豊かさを」、「レッスンを通じて自身の課題に根気よく向き合い、乗り越えるしなやかな強さを」お届けしたいと考えております。 一見、華やかなバレエの世界ですが、その成長は地道な努力の積み重ねです。 ですが、講師たちは、そのような中でも子どもたちと「楽しさ」を共有しながら、子どもたちの中に眠っている「可能性」や「伸び代」を見出だし、レッスンを通じて、その成長をサポート出来るようなクラスをご提供しています。 そしてゆくゆくはバレエだけに限らず、新しいことにチャレンジ出来る人になっていただければと思いますし、その中でもバレエを選び、さらなる努力を楽しんでくれる人が出てきてくれたら、これ以上の喜びはありません。 ひとりでも多くのお子さまとご縁をいただけますことを、心より願っております。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 みなとシティバレエ団附属三田バレエスクールでは、夏の発表会(おさらい会)に向けての練習が始まっています。 スクールの発表会は「日頃のレッスンの様子や、生徒の皆さんの頑張りを発表する会」ですから、急に難しいテクニックに挑戦したり、子どもたちの身体に過度な負担となるような振り付けは行いません。 ですが、作品としてお客さまにお届けするためには、「今、手元にあるもの」をそのまま発表するのではなく、より「伝わる」ものにするための丁寧な練習(リハーサル)が必要となります。 講師も各クラスの課題をおりこみつつ、生徒の皆さんが表現力を身に付けられるような「作品」になるように、振り付けを考えたり、アドバイスをお伝えしていますから、生徒の皆さんも少しでも「より良い」ものに出来るように、毎回のレッスンに臨んでいきましょう。 今回の記事では、「合同リハーサル」、「照明合わせ」、「舞台リハーサル」、「ゲネプロ」についてお話いたします。 このコロナ禍で以前のような形がとれない場合もありますが、講師、スタッフ一同で感染症対策をしっかりととりながら、発表会本番に向けてオペレーションを進めてまいります。 1つ目の「合同リハーサル」は、発表会そのものの一連の流れを把握したり、作品によっては、いつもは別のクラスで練習している生徒さんが集まってフォーメーションや移動の確認を行う日となります。 特に小さい生徒さんにとっては、いつものスタジオの広さではなく、舞台の広さに慣れていくためのチャンスでもありますし、大きな生徒さんにとっては、他のお友達や他のクラスの作品を見て、刺激を受けたり、学びにもなることでしょう。 講師としても、改めて客観的に作品や生徒さんの様子を確認することが出来、本番までにさらに「より良い」ものにするための取り組みが見えてきます。 2つ目の「照明合わせ」は「スタッフ下見(したみ)」と呼ばれたり、「総見(そうけん)」と言われたりもします。 発表会では、生徒さんがよりすてきに踊れるように、たくさんの技術スタッフさんがサポートしてくださいます。 パッとあげるだけでも、発表会全体がうまく進行するようにとりしきってくださる舞台監督さん、音楽を絶妙なタイミングでコントロールしてくださる音響さん、皆さんの踊りやお衣裳がより良く見えるようにライティングしてくださる照明さん、その他にも大道具さんや小道具さん、そしてホールのスタッフさん…これだけたくさんの方々のお力添えをいただいて発表会が成り立っていますから、感謝の気持ちをもって舞台に立ちたいものですね。 そのスタッフさんたちが、生徒さんの実際に踊る様子や、移動する様子をご覧になって、当日のオペレーションのプランを細かく打ち合わせていく作業を「スタッフ下見(照明合わせ)」と呼びます。 経験豊かなスタッフさんたちとお話をさせていただくと、私たち講師も新たにお勉強させていただけるので、とても貴重な時間となります。 「舞台リハーサル」はスタッフ下見で打ち合わせた内容を、実際の舞台で実施してみる日です。 また生徒さんにとっては、先の記事で説明した「上手・下手」や「袖幕」、「緞帳」などを実際に見たり、舞台の大きさに慣れて、立ち位置などを覚えたり、また移動の動線を確認する日にもなります。 本番当日に舞台で迷子にならないように、しっかりとそれらを覚えておきたいものですね。 「ゲネプロ」は本番当日の舞台リハーサルのことを言い、メイクをし、お衣裳をつけて、本番と同じ流れで踊ります。
もともとはドイツ語の「ゲネラールプローベ」から来ており「GP(ゲーペー)」と言われたりもします。 この時点で何事も無く進行出来ることが理想ですが、特に舞台セットなどがつく場合には、様々なハプニングやトラブルも見つかったりしますし、大きな問題ではなくても「より良い」舞台作りのためにスタッフさんが色々と調整してくださることもあります。 上記の4点に共通しているのは、たくさんの人々が生徒さんの本番のために尽力してくださっているということです。 どうそその事を忘れずに舞台に臨んでくださいね。 そしてたくさんの人が集まるということは…「ひとりひとりの声は小さくても、集まればうるさくなる」ということでもあります。 スタッフさんのお仕事のおじゃまにならないように、いつも以上に気を付けて行動しましょう。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 皆さまの中で、こちらのフレーズを聞いたことのある方はいらっしゃいますか? 「健全なる精神は、健全なる肉体に宿る」 これはもともと古代ローマの詩人・ユウェナリスの風刺詩集にあった「人は神に対して<健全なる身体に宿った健全なる精神>が与えられるように祈るべきだ」という言葉からきています。
そしてこの文章で伝えられているのは「身体が健康であれば、精神も健康だ」ということではなく、「どんな状況にあっても健やかな精神であれるようにすることが大切だ」という諭しであるとされています。 ですが、教育的指導などの面で用いられた時に、その「健やかさ」は深い思慮を失って単純化され、近代に入ってからは、軍国主義のスローガンとして用いられることが多くなり、もとの意味ではなく「強さ=良いもの」、「障がい=良くないもの」というような、権力者にとって都合の良いものにねじ曲げられてしまったようです。 今回の投稿では、もう少しお話の範囲を狭めて、心と身体の関係を考えてみたいと思います。 以前の記事で、王候貴族の威厳やオーラを表現するような、頭を起こし、首を立て、背筋を伸ばした姿勢のお話をしました。 さて、そのような姿勢をとった時、またはとる時、皆さんはどのような気持ちになるでしょうか? 「えっへん!」と大いばりな気持ちになったり、「どうだ!」と見せびらかしたい気持ちになったり、「かかってこい!」と強くなったような気持ちになったりするのではないでしょうか? 逆に、肩を落として、しょんぼりとした姿勢で「かかってこい!」という気持ちになれる人はいるでしょうか? 姿勢や、動き、目線や、呼吸などは、人の心に大きく影響を与えますし、気持ちのありようが、態度や言葉にあらわれることもあります。 バレエでは、動き出す前にプレパレーション(またはプレパラシオン)と言って、準備の動きが入ります。 それは、自分自身にも周りの人にも「これから自分は○○をしますよ!」と伝える役目を持ちますし、運動そのものへの準備にもなります。 このプレパレーションをきちんと行うことで、身体と気持ちの関係をより良いものとし、効率良く動けるようにしているのです。 と言うことは、逆に動きにくくなってしまったり、気持ちを後押ししてくれないプレパレーションをしているのであれば、それは形ばかり真似をした意味のない動作になってしまいます。 特に、筋肉の働きや、骨の仕組み、またバイオメカニクス(運動力学)の面からバレエのポジションや動きを考えると、動きの強度や難易度は高いですが、動きとして「無理!」というものは無いことが分かってきていますから、バレエを形だけでとらえることなく、「より良く動く」、「より良く踊る」、「より美しく在る」ためにレッスンに取り組んでいきましょう。 そう考えた時、「身体のかたさ、心のかたさ」の関係が見えて来ると思いますし、逆に「開脚が180°出来る」だけでは、「えび反り(おでこと爪先をくっ付ける)が出来る」だけでは、そして「正しい姿勢」や「良い姿勢」だけでは、動きとして、さらには踊りとして、心のこもったものにはならないことが分かると思います。 健やかな身体と健やか心で、すてきなバレリーナになれるよう、日々のレッスンを頑張りたいものですね! また別の機会に、心と身体を整える簡単なワークをご紹介出来ればと思います。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 今回、ご紹介する絵本は、春になると必ず思い出す1冊です。 バレエのレッスンを続けているのに、なかなか上手になれなくて困っている、主人公の女の子。 「バレエが上手になりますように…」といつも願っていますが、どうしてもすてきに踊ることが出来ません。 そんなある日、「山のくつや」さんからお家に1足のシューズが届きました。 「山のくつや」さんは、なぜ女の子がバレエを習っていることや、上手に踊りたいと思っていることを知っていたのでしょう? 不思議に思いながらも、そのシューズに導かれて、女の子は「山のくつや」さんに会いに行きます。 女の子が「山のくつや」にたどり着くと、大きな桜の木の下でうさぎのくつやさんが、大忙しでシューズを作っていました。うさぎのくつやさんは、うさぎバレエ団のみなさんのために、なんと、30足ものシューズを完成させなければならないのです。 シューズ作りのお手伝いをする女の子。 その完成を今か、今か、と待っていたうさぎバレエ団のうさぎたちは、出来上がったシューズを早速履いてバレエの練習を始めます。 うさぎたちの練習に加わった女の子は、空が薄紫に染まるまで、跳んだり、揺れたり、回ったり…まるで桜の花びらのようにすてきに踊れるようになっていました。 ふと気付くとくつやさんもバレエ団のうさぎたちも、その姿が見えません。 でも女の子の中には、うさぎたちとすてきに踊ったあの感じが残っていましたから、お家に帰ってからも桜のようにすてきに踊って見せることが出来たのでした。 「うさぎのくれたバレエシューズ」は、阿房直子作、南塚直子絵の美しい絵本です。桜の花びらが舞う様子を描く、色鉛筆のような、クレパスのようなタッチが、その軽やかさを表して、時に桜の香りまでがただよってくるように感じます。 バレエを習って5年経ち、なかなか上手くならないことを悩む女の子は、多くの小さなバレリーナの共感をよびますし、「私にもうさぎのくつやさんからシューズが届かないかしら?」と思った人もいるのではないでしょうか? スクールが附属している「みなとシティバレエ団」も、プロのダンサーとして活躍するだけでなく、小さなバレリーナの「上手に踊りたい」という気持ちを後押し出来るような、お役に立てるような活動にも力を注いでまいりますので、今後の「みなとシティバレエ団」にもどうぞご注目ください。(木村)
こんにちは、池上校講師の木村美那子です。
ひとつ前の投稿で「七転び八起き」のお話をしましたが、今回は「余白」についてお話いたします。 これは先の記事で「お芝居」について「リアルを求めすぎると、バレエとして伝わらなくなってしまう」というお話をしましたが、もしかしたらそれにもつながるかもしれません。 (つまりは、すべての物事はバレエに無関係ではないということですし、だからこそ日々の生活や、立ち居振る舞いが大切であると分かりますね!) バレエは400年以上前に、ポジションなどのおおもとが定められてから、人間の身体能力の向上に伴って、強度や難易度は上がってきましたが、根本的な仕組みに大幅な変化はありません。 それだけしっかりと(時には頑固なほどに)決められたバレエは、技術的な「出来・不出来」についてだけ見れば、それは明白に客席にあらわれますし、もしそうでなかったとしても、自分自身にはしっかりと分かってしまう、シビアなものでもあります。 だからこそ、レッスンでは「余白」の有無がとても大切になると考えています。 どうしても詰め込みたくなる気持ちや、大人の考えるレベルを徹底したくなることもありますが、先の記事でもあげたように、子どもたちの「柔らかい脳」は、大人以上にたくさんの刺激を受け取ってしまいますし、取捨選択が上手に出来ないために、その処理に多くのエネルギーを使います。 (その刺激を受けて、シナプス同士のつながりが活発になり、細胞の活動速度や仕事量は上がりますが、その活動が活発過ぎると、脳内の細胞は通常より速い速度で「死」に向かいます。これは子どもたちの「臨界期」とエントロピーに紐付けて、いつかお話出来ればと考えています。) それは「難しい・難しくない」で区別することではなく、「処理出来る・処理出来ない」の点から考える必要があり、講師にはバレエの知識だけでなく、身体の知識だけでなく、そういった部分でも検討する力が求められていると、近年ますます感じています。 そういった意味で「バレエを上手に踊れる人が、指導も上手」と言い切れない難しさでもあるのです。 子どもは大人のミニチュアではないことをしっかりと念頭に起きつつ、子どもたちとバレエの楽しさを共有し、共に課題に取り組み、その成長の一助になれるようなレッスンをご提供させていただいております。 そしてその「余白」は、思いやりや想像力、プロセスを楽しむ心など、数値では測れないもの、点数で表せないもの、そして人生に豊かさを与えてくれるものの生まれ出てくるスペースでもありますから、子どもたちの「余白」がより彩りのあるものになるように、「気にかけ、手をかけ、声をかけて」まいります。 どんなレッスンをしているのかな?と、ご興味をお持ちになった方は、ぜひ一度、池上校スタジオへ足をお運びください。 現在、体験レッスンを実施しております。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 新学期が始まって1ヶ月、子どもたちの中には、それまでのやり方が上手くいかなくなって、悔しく思ったり、悲しくなってしまう人もいるかもしれません。 新しいことを体験したり、学んだりする時には、上手くいかないことも多いですし、出来ないことも多いのが普通だ、と私たち大人は思うものですが、それもたくさんの経験から分かったこと(もしくは自分を納得させるために、そう思ったこと)で、経験や体験の少ない子どもたちにしたら、ショックな出来事かもしれません。 ですが、このショックな出来事を大人が手を出して回避させてしまっては、いつまでたっても「新しいことをする時には上手くいかないことがあっても良い」と理解する段取りを踏むことが出来なくなってしまいます。 失敗してほしくない、最短距離で正解にたどり着いてほしい、と思うことも当たり前ですし、それが自分たちの大切に思っている子どもたちについてのことであれば、それも愛情であることにかわりはありません。 それはバレエのクラスを担当する講師たちも同じことです。 特に身体の成長や、体力の点から、全力のパフォーマンスを「向こう見ず」に行える期間が短く、それでいて感性を成熟させ、「相手に伝わる」だけの表現力を磨く必要があるバレエでは、限られた時間の中で、出来るだけ正解だけを効率良く伝えていきたいと思ってしまいます。 もちろん、その方法で上手くいく人も中にはいるかもしれません。 ですが、もしその人をサポートする人たち(大人たち)がいなくなった時に、上手くいかないことが生じてしまったら… それは例えば、地図に書いてある最短距離の道を歩いていたら、そこが工事で通行止めになっていた時と似ていますね。 その場所を初めて訪れたのであれば「通れない!どうしよう?」となってしまいますが、その辺りに詳しい人であれば「あ!あの道が確かあそこに通じていたな、そちらを通ろう」となりますし、もし街歩きの経験が豊かだったり、そのような体験をしたことがある人であれば、初めての場所でも(多少時間はかかるかもしれませんが)「ここの道を行ってみよう!」と、進んでみることでしょう。 もしかしたら、近くのお店に入って「ここから○○まで、あの道を通らないで行くにはどうしたら良いですか?」と、尋ねることも出来るかもしれません。 上手くいかないことに対して、自分がどうやって取り組もうかと考えること、目的地までの道のりを諦めないこと、そして時には他の人の助けを借りるための行動力を持つことが、子どもたちの成長にはとても大切だと思います。 ですから、レッスンではたくさんのケースを経験し、そしてそれに対して「自分がどうしたいのか」、「自分がどうすべきなのか」、「どうやったら解決にむかえるのか」などを「答え」ではなく「プロセス」として学び、実施する時間を過ごしてほしいと考えています。 そのために、ノーヒントでワークを行ったり、質問をして、その答えに至る考え方を共有したり、時には講師がわざと「上手くなく」お見本を見せることで、その問題点を見つけ、解決策を探す…という作業をしたりします。 (ノーヒントで行う場合は、お手伝いの記事でもお伝えしたように、低速のお見本を見る時間、言葉の説明を聞く時間、自分でやってみる時間、に分けて丁寧に行います。) それらのオペレーションをするにあたっても、「安心して失敗出来る」だけの講師と生徒の信頼関係や、コミュニケーション能力が必要になってきますから、これまでの記事でもお伝えしてきたように「バレエ以前」のあれこれが大切なのです。 その意味でも、先の投稿のテーマであった「担任制」が大切になってきますし、また担任でないとしても、その子どもたちに関わるのであれば(たとえレッスンを担当しなくても)、コミュニケーションがとれるだけの準備を「大人の側が」しておく必要があるのです。
「家族ではないけれど、子どもたちを見守りサポートする覚悟を持つ大人」で在れるように、これからもつとめていきたいと考えています。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 当スクールではクラスごとに担任制をとっており、特に一定の期間はクラスをまたいで、一人の講師が継続していますが、これには理由があります。 バレエの技術を伝えるだけであれば、特にバレエというジャンルは実施するワークの内容が(難易度や強度は変わりますが)大きく逸脱することはないので、毎回、別の講師のクラスを受けることに問題はありません。
だからこそ「バレエは世界共通語」と言うことも出来るわけですが、一方で、そのシステムがシステムとして最優先になってしまうと、システムに適合しない人はふるい落とされてしまいます。 もちろんプロを目指すのであれば、そのシステムに見合う人になれるように努力をし、時に悔し涙を流さざるを得ない場合もありますが、その体験すら自身の糧として、いつかはシステム自体を乗り越えられる存在になることを目指さなければなりません。 ですが、ベビークラス、プレエレメンタリークラス、エレメンタリークラスにあたる年齢は、「柔らかい脳」を育てる時期でもありますから、バレエのシステムだけを手渡して、その結果を見て評価をするのでは、スクールとしては十分ではないと考えております。 ですから、担任制をとることによって、継続的な心身の成長観察をし、バレエを学ぶに無理のない土壌を子どもたちと準備するのはもちろんのこと、それと同時に、ひとりの人間としても、その成長を見守り、サポートをしていくための「場」にもなれるようにつとめてまいります。 バレエを通じて、脳内での刺激の感受性が高い「臨界期」により良い体験を積んでいただければと思いますし、その中からバレエの道に果敢に、そして希望をもって進んでくれる子どもたちが出てきてくれたら、これほど嬉しいことはありません。(「臨界期」についてはまた別の記事でお話しますね!) どのようなレッスンをしているのか気になった方は、ぜひ一度、池上校スタジオまで足をお運びください。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 新学期がスタートし、1ヶ月が経とうとしています。 新しいお友だちが出来て、毎日が楽しい人もいれば、新しい環境で一生懸命頑張って、くたびれてしまった人もいるかもしれません。 気温や湿度の上がり下がりも大きいので、しっかり食べて、しっかり寝て、いつも以上に体調管理に気を配りましょうね。 新しい環境で刺激を大いに受けているからか、この時期、子どもたちからは「先生、あのね!今日ね!」とたくさんのお話を聞くことが出来ます。 その日の給食のこと、お友だちと何をして遊んだか、どんな漢字が書けるようになったか、そして「もう○本も歯が抜けたの!」というお話も。 私たち講師は、こうしたおしゃべりの中から、子どもたちの様子だけでなく、体調のことや、「何が気になっているのか」というような心の健康についても、ヒントを得ています。
限られた時間の中で接するレッスンだからこそ、レッスンを頑張るのはもちろんのこと、子どもたちの「居場所」としてのスタジオでも在りたいと思いますし、講師たちも「ただバレエを教える」だけでなく、子どもたちの成長の一助にもなれたらと考えています。 限られた時間の中で、それぞれの課題をクリアして行くので、時にはレッスンだけを行わなければならない場合もありますが… おしゃべりの時間は、講師が子どもたちの状態を把握するだけでなく、子どもたちにとっても必要な時間であると考えています。 先の投稿でもお話したように、子どもたちは毎日、その小さい身体と頭と心にたくさん(過ぎるほど)の刺激を浮けています。 大人であれば、無意識に選択しているような情報も、ほとんど全て受け止めているので、それを心身に負担にならないところまで整理整頓したり、処理したりするには、外からの働きかけや外とのやりとりの時間が必要です。 たくさんの刺激を受ければ受けるほど、子どもたちの心身は成長しますが、処理しきれない刺激を整頓するためにも「あのね!今日ね!」のおしゃべりを「無駄話」などとはとらえずに、「ふんふん、それで?そうか~そんなことがあったんだね!楽しかった?」と、聞いたり、気持ちを一部代弁することで、よりスムーズな成長にもつながります。 そしてこのコミュニケーションで「この大人は信用出来る」と子どもたちが感じると、他者とのコミュニケーションの成功体験として、外に向けて自己表現をしたり、自信をもって発信出来る人になっていけると思いますから、お家でもたくさんお話してくださいね。(木村) |