こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 以前、作品紹介で「くるみ割り人形」と「白鳥の湖」を取り上げた際、さまざまな国やお菓子の踊りを中心にご説明しました。 その中でも特定の国や地域の民族舞踊をとりいれた踊りを「キャラクターダンス(キャラクテール)」と呼び、日本ではまだまだ一般的ではありませんが、バレエ学校ではカリキュラムの1つとして必修科目となっています。 日本ではキャラクターダンスのクラスで学ぶのは、マズルカ、チャルダッシュ、タランテラ、スパニッシュの4種類が多いかと思います。 これらのダンスは、それぞれの国や地域の伝統舞踊や民族舞踊のエッセンスをとりいれつつも、あくまで「バレエの一部」としてとらえられ、また学ばれてきたということを忘れてはいけません。 まずは「キャラクターダンス」が形作られてきた歴史を簡単に見ていきましょう。 19世紀にフランス、スペイン、アメリカで、バレエダンサーとして活動していたマリウス・プティパは、その後ロシアにプリンシパル(主役を務める高位ダンサー)として招かれます。 その後、バレエ教師(メートル・ド・バレエ)としてロシア・バレエの発展に貢献したプティパですが、教師としてだけではなく振付家としても数多くの作品を手掛け、その多くは今も多くの人々に愛され続けています。 宮廷の余興としてバレエが踊られていた頃は、歌あり、セリフあり、踊りあり…という形で実施されていましたがプティパによってそこからダンスの要素と、マイムによる身体の動きによるセリフ的表現が抽出されていきました。 そしてダンサーであったプティパは、さらに技巧バレエとしての部分とマイムを分けて、特にダンスとしてのバレエを向上させようとしました。 その分、マイムやかつてはセリフで表されていた部分を踊りの構成から判断しやすくなるようにしたり、ダンサーそれぞれの技能をしっかりと見せる場面を差し込んだりと、作品構成そのものに工夫をこらすようになり、そのためのちに「バレエの父」と呼ばれるようになります。 そしてそれらの工夫のなかで、プティパは自分の得意としていたキャラクターダンスにも力を入れて、「ディベルティスマン」の1つとして、その見せ場を多く作っていくのです。 実はプティパは「あなたは脚の形が美しくないから、じっとしていない方が良い」と言われたために、足さばきや技巧を多く身に付けたとか…そして、マイム役者としても重用されていたことを考えると、その様々な要素に取り組んでいたそれまでのプティパの経験が「バレエの父」と呼ばれるようになった土台を作っていたのかもしれませんね。 もともとの民族舞踊は、地域の人々の団結や協力を導き、盛り上げるためのものでしたが、バレエでのキャラクターダンスには、民族舞踊の持つ独特のエッセンスや、そこから来る華やかさやエネルギーの表現が大切になってきます。
ですから、それぞれの型を学ぶためのバーレッスンやセンターレッスンはもちろん必要ですし、大切ですが、それ以上に上のような役割を果たせるように心がけていくと、クラシックとはまた違った喜びや楽しさを感じることが出来るのではないでしょうか。(木村)
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こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 皆さまは、新宿マルイ本館にて開催中の写真展を体験されましたか? 時間を決めて、写真家とモデルのダンサーが在廊していますが、やはり週末はご来場の方が多く、なかなかゆっくりとお話をすることが難しい場合もあります。 平日も20:00までオープンしておりますので、落ち着いて作品をご覧になりたい方は、ぜひ平日の夜に足をお運びください。 先日は開店前のマルイ本館に、一足お先に入館させていただきました。 お客さまがいらっしゃる前の劇場は見慣れたものですが、デパートでそのような体験をしたのははじめてでしたので、わくわくどきどき… お店のスタッフさんと同じ通路を通って、たくさんのお洋服やお品物が保管してあるバックヤードを通って、キョロキョロしながら写真展の会場である4階に到着しました。 日頃、お買い物をしているフロアーの華やかでにぎやかな様子とは雰囲気が異なり、照明も最低限で物音ひとつしません。 ですが、その静けさの中にも「さぁ、これからお客さまをおむかえしますよ!」というような意気込みや、「お客さまが楽しんでくれますように!」というようなわくわく感が感じられて、その場にいる自分自身にもエネルギーが満ちていくような気がしました。 それは、きれいに並べられたたくさんのお品物からはもちろん、それを前の日にきちんとディスプレイされているスタッフさんのお気持ちが、その空間に満ちていたからかもしれません。 そして、写真展の会場もレセプションの時とは、レイアウトを変えて、より多くの方がゆったりと展示を楽しめるようにしてあり、こちらも「皆さまがすてきな時間を過ごせますように!」という空気感が漂っていて、とても心地の良いものになっていました。
お店にしても、展示にしても、もしかしたらパフォーマンスにしても、長い期間を過ごしたり、同じことを繰り返していると、慣れが出てきたり、ほんの少しの気のゆるみから見落としをしてしまうこともあるかもしれません。 ですが、それが積み重なっていったら、どうなってしまうでしょうか? 以前、お店の方とお話をさせていただく機会があったのですが、印象的だったのは「常連のお客さまにしても、その時偶然にご来店いただいた方にしても、<いま、ここ>で出会い、同じ時間を過ごすのは<いま、ここ>でしかありません。だからこそ<いま、ここ>を大切にしています」という姿勢でした。 これは、私たちアーティストが舞台やパフォーマンスにかける想いとまったく同じですし、また私たち講師がクラスにかける想いとも通じるものがあり、お仕事は違えども深いところで繋がっているのだな、と感激しました。 そして改めて、自分が「お客さま」としてお店や、劇場に足を運ぶ際には、パフォーマンスに関わる人々やスタッフさんとも、より良い<いま、ここ>を共有出来るような、より良い自分で在りたいと思いました! 日々のレッスンを頑張っている生徒の皆さんも、どうぞ<いま、ここ>に慣れることなく丁寧に積み重ねていきましょうね。(木村) 池上でバレエをするなら! こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 ゴールデンウィークもあっという間に終わり、6月が過ぎれば2022年も半分が過ぎたことになります。 新型コロナウイルスの感染状況については、まだまだ油断が出来ませんが、それでも今年は昨年以上に活動し、自身の成長の成長や、人のお役に立つことに取り組んでいけるよう、毎日を丁寧に過ごして行きたいですね。 さて、皆さんは登山をしたことがありますか? 関東圏に住んでいる人であれば、遠足で高尾山や筑波山などの低い山に行ったことがあるかもしれませんね。 どれだけ低い山だったとしても、山に登る時にはきちんとした準備が必要です。 歩きやすく滑りにくい靴や、草葉で怪我をしないための長いズボン、急な雨をしのげる折り畳み傘やウインドブレーカー、万が一帰れなくなった時のための非常食、応急手当の出来るセット…等々、少し心配性過ぎるかな?と思っても、何かあった時に「持ってきておけば良かった」とならないために準備をしておくと良いでしょう。 また、少しでも高い山に登る時は、事前に必ず登山計画を提出してから入山します。 これは万が一、山で遭難したり、怪我をして山を下れなくなった時に、救助に向かう人々がその人を探しやすくするためと、救助者自身が辺りをやみくもに探し回って二次被害を起こさないようにするためです。 今日のタイトルである「山に登る」では、まず「準備の大切さ」についてお伝えしています。
バレエで言えば、骨や骨格がしっかりしていない、または筋肉が十分育っていない状態で、無理なテクニックを押し付けたり、トゥシューズを履かせるなど、「現状をきちんと把握していない」とか、「リスクマネジメントが出来ていない」こと、などが準備不足にあたります。 また情報処理や気持ちの整理の付け方において、まだ経験の少ない子どもたちに、精神論(根性論)を押し付けてしまうことなども、より良い準備が出来ているとは言えないでしょう。 その一方で、「遭難したらどうしよう」とか「怪我をして山を降りられなくなってしまったらどうしよう」と、心配してばかりいては、山で体験出来るはずの豊かな自然や、森の香り、小鳥のさえずりや、せせらぎの音、木々の間から差し込む光や、休憩の時のご飯の美味しさ、そして頂上の展望台まで来た時の「やったー!」という気持ちは、ずっと味わえないままになってしまいますね。 きちんと準備が出来たら、勇気を出して最初の1歩を踏み出してみましょう! バレエでは自身の経験と、十分な学びを得た先生が、いつも皆さんを見守っています。 先生達が「大丈夫、やってごらん!」と言う時には、どうぞ勇気を出してトライしてみてくださいね。 たとえそこで上手くいかないことが出てきたとしても、皆さんが「遭難」しないように、先生たちはいつでも手を差し伸べる準備は出来ていますし、そこからまた学びを得た皆さんは、その経験を活かして「次の登山」に向けて、しっかりと準備をすることが出来るようになるはずです。 より高い山にチャレンジするもよし、ゆっくり景色を楽しむもよし、これからもそれぞれのペースで進んでいきましょうね。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 今回の「○○に行こう」は「劇場に行こう」の第2弾で、「座・高円寺」をご紹介いたします。 名前にもある通り、高円寺の駅から線路沿いに5~7分程歩いた所にある劇場で、今回は地下2階の「座・高円寺2」を訪れました。 外観は平屋風で、丸い窓がたくさん付いていて、外壁の色味もあいまって、何となくてんとう虫のようなかわいらしい感じの建物です。 設計を手掛けたのは、串田和美さんが芸術監督をつとめている「まつもと市民芸術館」の設計でも有名な、建築家の伊東豊雄さんです。 ちなみに木村が串田和美さんのお名前を知るようになったのは、歌舞伎の中村勘三郎さんが、古典歌舞伎の新解釈作品を多く上演するようになってからのことで、それまでは現代劇の方については知識がありませんでした。
舞台監督の方とお話をする度に、アドバイスをいただきますが、特にバレエの人たちはもっともっと多くの作品に触れたり、学んだりしていかなければ、そしてその上で「バレエとは何か?」を考えなければならないと思います。 そして「座・高円寺」の芸術監督は佐藤信(まこと)さんで、この方は、それまで「世田谷パブリックシアター」の芸術監督も務められました。 こちらも大好きな劇場なので、またいつかお話出来ればと思います。 さて、中に入ると、てんとう虫の窓からたくさんの光が差し込み、いよいよ劇場にやってきたなという気持ちになり、階段を降りながらだんだんと作品観賞への心の準備が出来ていくようです。 階段の踊場には壁一面に今まで上演されてきた作品のポスターが貼られていたり、地下のロビーにはたくさんの絵が展示されていたりして、劇場の懐の深さや、歴史を積み上げていくことの大切さを再確認しました。 そして「座・高円寺」には、演目によって自由に舞台・客席の形状を変えることが出来る「座・高円寺1」や、有名な「高円寺阿波おどり」の普及を目的とした「阿波おどりホール」もあり、人々が劇場を身近に感じられる素敵な場所でした。 こちらにはアーカイブを見ることの出来る資料室や、「ファーブル昆虫記」のアンリ・ファーブルの名を冠した喫茶室も併設されているので(やっぱりてんとう虫なのでしょうか?)、ぜひ皆さんも一度訪れてみてくださいね。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 皆さんはハンス・クリスチャン・アンデルセンという作家を知っていますか? もし彼の名前を聴いたことがなくても「人魚姫」、「マッチ売りの少女」、「みにくいアヒルの子」、「雪の女王」、「親指姫」、「はだかの王様」、「赤いくつ」、「パンを踏んだ娘」などなど、皆さん一度は彼の書いたお話を読んだり、聞いたりしたことがあると思います。 今回は「えんどう豆の上に寝たお姫さま」という作品をご紹介しましょう。 昔々あるところに一人の王子さまがいました。 王子さまは結婚してお妃さまになってくれるお姫さまを探していましたが、そのお姫さまは「本当のお姫さま」であってほしいと思っていました。 ある日、お城にびしょ濡れになったお姫さまが「私は本当のお姫さまです。どうかお城に入れてください」とやって来ました。 王子さまは彼女の身なりから、本当のお姫さまかどうか分からずにいましたが、その晩、お姫さまに貸したベッドに一粒のえんどう豆を置き、その上から20枚の敷き布団と20枚の羽布団をかけておきました。 翌朝になって「昨日はよく眠れましたか?」とたずねると、そのお姫さまは「ベッド下に何が入っていたのでしょう?何か固いものが当たって一睡も出来ませんでした。」と答えました。 王子さまは「こんなに繊細な人であれば、本当のお姫さまにちがいない」と、そのお姫さまに結婚を申し込んだのでした。 バレエには決められたポジションや、動き方のルールがありますが、これは王候貴族が、その立ち居振る舞いをエレガントに見せるための教養やマナーから出来上がって来たものだと考えられています。
特にその時代のバレエは、その王候貴族達が考える「世界」の中だけでイメージされ、作られてきましたから、地位や権威、そして何よりも「王が王であるような」エレガントな美しさが求められていました。 そのような王さまや王妃さま、王子さまやお姫さまであれば、本来は心身ともに繊細な感覚や、深みのある思考や、国や領地を代表し、有事の際には自身の民を守る強さを兼ね備えているべきかと思います。 この「えんどう豆の上に寝たお姫さま」ではその繊細さにフォーカスをあてて物語にしていますが、王候貴族たちの文化から生まれたバレエを習ったり、学んだり、踊ったりする私たち、そして時には舞台の上でお姫さまそのものとしてお芝居をする私たちには、この繊細さが必要だと思います。 バレエのポジションや形だけにとらわれてしまうのではなく、その奥にある「本当の美しさ」を見つめたり、小さな筋肉や関節の調整をしながら、「本当のバレエ」に手を伸ばし続けたいものですね。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 前回の投稿で、本題の「コンテンポラリーって?」からは少し離れたかもしれませんが、「多様性」についての金森氏の引用をさせていただきました。 今回はその「多様性」について、少しずつお話していこうと思います。 2018年、現在はチャコットの傘下にある、大手バレエ用品メーカーの「フリード・オブ・ロンドン」で、「ピンク色ではない」トゥシューズが発売され、大きな話題になったことを、皆さんはご存知でしょうか?(ゲイナー・ミンデンもそれ以前に発売していたが、それほど話題にはなりませんでした。) それまで、トゥシューズはサーモンピンク、チェリーピンク、ロイヤルピンク…など様々な種類ではありますが、ピンクに統一されたカラーの取り扱いしかありませんでした。 また、バレエタイツについても白、ピンク、肌色に近いベージュが主に用いられてきました。 まずは、その「ピンク色ではない」トゥシューズが販売されたことの意味を考えてみましょう。 これまでお話してきたように、バレエは王候貴族の社会で生まれ、ある時代まではそのような人々に守られて育ってきました。 そしてそのような人々がイメージをする「お姫さま」や「王子さま」、そして「フェアリー」は、自分たちの暮らす世界から想像されたので、いわゆる「白人」となったのです。 それ以来、メソッドだけでなく思考もバレエの一部として、世界に広まり、また根付いてきました。 しかし、世界はそんなに狭いものでも、限定された人間で成立しているものでもない、ということは、16世紀ではなく、21世紀に生きる私たちから見れば「当たり前」のことです。 ですから、いわゆる「白人にならなければならない」というような慣習や考え方に縛られる必要はありません。 「ピンク色ではない」トゥシューズは、その事をバレエの世界に発信するきっかけになったと思います。 その一方で、「作品」や「役柄」について考えてみましょう。 すでにイタリアのルネサンス期には「タイツ」が登場しており(形は長い靴下のようなものでしたが)、王候貴族はもちろんのこと、一般市民もその「おしゃれ」に追い付こうと様々な工夫を凝らして、脚にフィットした「タイツ」を作って着用していました。 ルネサンス期のテーマは「ギリシャ・ローマの自然美の復活」だったので、脚にフィットした「タイツ」で脚線美を見せようとしていたようです。 そして、フランスに伝わり、ルイ14世のもと「国王たるもの、ものを言わずとも、その立ち姿、佇まいがエレガントであること、それが王の威厳である」という考えから、さらに洗練され、その脚線美のためにハイヒールを履くなど、タイツと靴の関係性も重んじられていきます。 と言うことは「タイツの文化のある時代」の人物を演じるには、やはり「タイツの文化のある時代」を理解する必要があるのです。(たとえそれが奇抜な色の組み合わせだったとしても…!) 日本で言えば時代劇の役者さんが「21世紀なんだから、殿様に平伏しなければならないのはおかしい!」などと、色々リクエストをしたとしたら、時代劇は時代劇としての様相をとれなくなってしまうでしょう。 また舞台効果についても考えてみたいと思います。
私たちがタイツとシューズの色を揃えるのは「少しでも脚を長く、美しいラインで見せることで、自分たちの踊りがより良い形で客席に届く」と考えているからです。 もちろん、それはタイツやシューズに頼ることなく、日々のレッスンやトレーニングで獲得していくものですが、「人に観ていただく」という責任においては、努力や工夫の出来るところは、手を抜かずに行うものだとかんがえます。 例えば、同じくらい美味しいお料理をいただける2軒のお店を考えてみましょう。 一方はテーブルが汚く、盛り付けも雑で、「召し上がれ」も「ありがとうございます」も無いお店、もう一方は「より美味しく召し上がっていただくには」と丁寧なお仕事を目指し、努力や工夫出来るところはないかな?と考えるお店…皆さんが、「また行きたいな!」と思うのはどちらでしょうか? ここまでをまとめると、前回の記事でもお伝えしたように、現実の世界での多様性や「ひとりひとり」の大切さは守られるべきで、その上で「ある作品」をより良い形で、よりたくさんの人たちと共有するための努力を惜しまず、そのためのツールを生み出せるように、人々がお互いを尊重しながら「自分に出来ることは何だろう?」と考えたり、行動することが、多様性の目指すものなのではないでしょうか? おまけ:みなとシティバレエ団の団長でもあり、附属スクールである三田バレエスクールと池上バレエスクールの校長でもある岡脇柚太加先生とお話をしていると、そのために何をしようか?というアイディアにわくわくします。今後のバレエ団とスクールの活動もお楽しみに!(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 皆さんは日々「クラシック・バレエ」のレッスンに励んでいると思います。 これまでに少しずつお話してきたように、クラシック・バレエは王候貴族の世界で誕生し、その舞台が宮廷から劇場に移っても、かつて「未来」と言われていた21世紀になっても、私たちが訓練をすべきバレエの根本的な部分では、その形はほとんど変わっていません。 5月11日(火)から、新宿マルイ本館4階で開催される写真展では「Ballet Authentic」では、ダンサーひとりひとりの様子だけでなく、バレエの継承してきたもののエッセンスを見ることが出来るかと思います。 もちろん、身分や階級が絶対的なものでなくなったことや、様々な地域の文化を尊重するように(ようやく)世界が改善されはじめ、またひとりひとりの「多様性」が守られるようになってきたことで、作品や演出は変化の兆しが見え始めています。 そしてそれは「国」の単位ではなく、「世界」で生きる者として、お互いを「思いやり」、「尊重し合う」ことは絶対に必要です。 ただ、この風潮も行きすぎてしまえば「現実世界のルール」に足もとをすくわれて、「作品の奥に流れる<フィクション>の美しさ」までもが消えてしまわないことを願います。 日本を代表する舞踊家のひとり、金森穣氏も「多様性」については、革新のためには大切な要素ではあるが、「芸道という継承の道を歩む者にとしては危機感を抱いている。芸の習熟に不可欠な鍛練、忍従、集団性が、効率、合理性、個人主義に置き換えられて、大切なものが失われていく気がするから。多様性が利便性に置き換えられている気がするから。」と発信しています。 また、特に今、私たちの生きる世界では、力をあわせて乗り切らなければならないことや、起きてはならないような悲劇が起きてしまっています。 そのような状況で、弱い存在である人間は誰かと比べて自身の優位を語ったり、相手の存在や考え方を否定的に批判したり、実際の力を使って叩きのめそうとまでしてしまいます。 そしてその狭量な心持ちは、ようやく芽生え始めた文化や風習など「人間の在りさま」の産物をお互いに尊重し、「思いやり」と「リスペクト」をもって守り、さらに磨いていくという、「今」を生きる私たちが率先して行うべきことすら、ストップをかけてしまうのです。 今回のタイトルである「コンテンポラリー(contemporary)」は「現代的な」「同時代的な」という意味です。 対義語としては「永久的な」を表す「パーマネント(permanent)」があげられますが、この「コンテンポラリー」を冠した「コンテンポラリー・ダンス」とは一体どのようなものでしょうか? 学術的な目線では「古典舞踊やクラシック・バレエの在り方や表現方法から脱すべく発生したもの、発生させたもの」となりますが、「現代的」「同時代的」に生まれた様々なダンスも、時代と共にもし方法論やメソッドが固定化されれば、やはり「クラシック・バレエ(classic ballet)」と同じように「現代的な(contemporary)」とは言い切れなくなってきます。 「コンテンポラリー」とは、「コンテンポラリー・ダンス」とは…?
本題までが長くなってしまいましたので、数回に分けてお伝えしていきたいと思います。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 ひとつ前の記事でレヴェランスのお写真を載せましたが、その際にふと子どもたちの「気持ち」を見たように思い、今回は「背中」の印象についてのお話をいたします。 バレエをはじめとして、客席に向かってパフォーマンスを行うものは、顔や身体の正面の見せ方をブラッシュアップすることが多いかと思います。 少し前までは、オペラの方たちは「自分の声が届かなくなるから」と、後ろを向いたお芝居や振り付けを好まなかったとか…? 現在では音響の技術も発達し、またオペラの方も「歌が上手い」だけではなく、お芝居もダンスも出来ないといけないので、そのようなことをおっしゃる方は少なくなったようですが、やはりバレエでもその立ち方や、歩き方に客席に対する意識が見てとれるように思います。 また、華やかなバレエの衣裳も、客席に向いている側の方がデコレーションか多いのですが、だからこそ、背中で語るものは多いのではないでしょうか? 人間は視界の範囲にない、背中側が非常に無防備です。 ですから、逃げ足の速くない多くの動物は、敵になるような動物に遭遇した時には、「自分が逃げられる」と分かるまでは、相手に背中を向けないと言われています。 それだけ無防備な背中(側)を、客席の皆さまにお見せすると言うことは、正面向きに踊る以上に気を配り、自身の身体と心をコントロールする必要があるのではないでしょうか。 例えば次の写真を見てみましょう。 後ろ姿しか見えませんが、左右のお写真には疲れた様子や、腕組みをして「ふんぞり返っている」様子が感じられると思います。
またお家で当てっこ遊びをする時に、背中を向けておいて「楽しいお顔でしょうか?悲しいお顔でしょうか?」ゲームをしてみてください。 その様子からほとんどの場合、正解を答えられると思いますし、問題を出す方も「楽しいお顔」をしながら、肩をガックリと落とすことが、意外と難しいことが分かるかと思います。 それほど「背中」には「語る」力がありますし、だからこそ背中への意識をしっかりともって、クラスに臨んだり、舞台に立つことが大切なのです。 どんなにきれいに着飾っても、その立ち居振る舞いに「より良く在ろう」としていない部分が滲んでしまったり、言葉づかいが汚かったりすると、それだけで相手に伝わってしまうものがあるように、「背中」から滲んでくるもので伝わることもありますから、日頃から自分自身の心栄えや、在り方にも気を配りたいものですね。 5月11日(火)から、新宿マルイ本館4階にて行われる展示会では、ダンサーの背中や足先のお写真も展示される予定です。それらの写真から、ダンサーの決意や強い意志を感じとっていただければと思いますし、アーティストたちもその意志を「背中で語る」ことが出来るように、努めてまいります。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 身体を動かすことや、身体の仕組みについて多くお話をしてきましたが、少しずつレッスンについてもお伝え出来ればと思います。 池上校スタジオは、現在、本格的な開講を控え、体験レッスンをご提供させていただいている時期ですので、木村がすでに担当しているクラスの様子からお話しいたしますね。 小さい子どもたちのクラスであっても、子どもたちのクラスだからこそ、「レヴェランス」と言ってお辞儀については特に丁寧に行います。 それは、バレエのレッスンを始めるための、子どもたちの「切り替えスイッチ」でもありますし、「私はバレリーナ!」という自覚を促すためのものでもあります。 王候貴族の文化として発展してきたこともあり、そのレヴェランスの動きひとつをとっても、そこから語られる多くのことがあるのです。
また先生たちにとっては、子どもたちのレヴェランスに向かうまでの様子を見れば、その時の気持ちの状態が分かりますし、レヴェランスには(テクニックではない)バレエの身体の使い方の要素が多く含まれているので、必要に応じてレッスン内容をカスタマイズすることが出来る、いわばバロメーターのようなものです。 どんなに素敵に踊ることが出来ても、「見てくださってありがとうございます」の気持ちを、見ている人にお伝え出来なければ、本当の意味での素敵なバレリーナにはなれません。 自分の踊りを見せびらかしたり、自分本位に踊る人を育てるのは、スクールとして目的とするところではありませんし、多くの人々とバレエを通じて「より良い」時間を共有するためには、気持ちを込めて、丁寧に物事に取り組む人になれるように、講師たちも子どもたちに丁寧に向き合ってまいります。 子どもたちは大人の鏡ですから、大人がきちんとご挨拶出来る人であれば、そしてそれが子どもたちの目に「すてき!」と映れば、自然と子どもたちもそのようになっていくことでしょう。 おまけ:木村はお店の方とも「こんにちは!」とご挨拶をしますし、忙しそうでなければ「ごちそうさまでした」、「ありがとうございました」、「お世話様でした」などと声を掛けてお店をあとにします。そうすることで、金額をこえたところでの「より良い時空間の共」が出来れば…と考えているのです。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 この度ビューティースタンドプラスの中島様とのご縁から、新宿マルイ本館4階にて、5/11-7/31の期間みなとシティバレエ団の写真展が行われる運びとなりました。 都内でもたくさんの方がお出かけされる新宿で、このような機会がいただけましたこと、心より感謝申し上げます。 こちらの写真展では、これまでのみなとシティバレエ団の活動を記録した写真の他、カンパニーメンバーの「今、ここ」を切り取ったポートレイトなどの展示や、ビューティースタンドプラスがセレクトした「見てかわいい、使って納得」のグッズのご紹介なども行われています。 木村も現場にお邪魔しましたが、お写真だけでなく、わくわくするようなかわいらしいグッズの数々に、本開催がとても楽しみになりました! 会期前なので、予告編として展示の始まっているパートしかお見せ出来ませんが、ぜひ皆さまも足をお運びくださいませ。 ちなみにアンティークなものが好きな木村からは、かわいらしい缶に入った石鹸がおすすめです。たくさんの香りから、自分のお気に入りを選ぶのも楽しいですね! そして、開催準備にお忙しい中、ビューティースタンドプラスの中島様と少しお話しさせていただいたのですが、ご本人も大のバレエ愛好家でいらっしゃるだけあり、こちらもわくわくするようなお話をうかがうことが出来ました。 中でも印象に残っているのが「バレエには色々な楽しみ方があって良いし、色々な表現の仕方があって良い。それを物販業界の僕たちが、現場のダンサーさんや先生方と協力しながら、そんな<バレエとの付き合い方>の実現のために、何が出来るだろうと考えています。そしてそれが世の中を少しでも幸せにすることにつながると信じています。」という言葉です。
木村自身も昔から「自分が目立ちたい」とか「自分の踊りを見ていただきたい」という欲の少ない人間で、自分がこつこつと稽古を積み上げていくことで「より良い人」になりたいという願いや、その自分が周りの人々のために、世の中のためにお手伝い出来ることはないだろうか?と、子どもの頃から歩んでまいりました。 そのような中で、たくさんのご縁をいただいてまいりましたが、今回の展示会を通じて、より多くの方がバレエをはじめとした芸術活動に触れるチャンスになるのではないかと、わくわくしておりますし、また、私たちの思う「幸せ作りのお手伝い」も体験していただけるのではないかな、とも考えております。 展示会が本開催となりましたら、また詳細をレポートいたしますね!(木村) |