こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 前回の投稿では、ストレッチ・ポールのご紹介と、ゆるめるだけでなく体幹のトレーニングも出来るというお話をしました。 ストレッチポール(Stretch Pole®️)には、少し細めのピンクや、短いもの、円柱形ではなく、その半分の「かまぼこ」のような形のものもありますから、用途や目的、トレーニング強度などにあわせてチョイスしてみてくださいね。 今回もストレッチ・ポールのワークについてご紹介していきます。 先の投稿でもお伝えしたように「見よう見まね」のワークは、目的とする効果が得られない場合や、時には怪我の原因ともなりますので、まずは一度、きちんとした指導を受けてから、トレーニングをするようにしてください。 以前の投稿で「背骨の大切さ」についてお伝えしたことを覚えていますか? 背骨は頭蓋骨・肋骨・骨盤をつなぐ大切にな骨であるとともに、肋骨部分では内臓を納めるケージ(かご)としての役割も果たしています。 その形状は「S字カーブ」となっていて「背骨を真っ直ぐ」にすることで、そのケージが十分なスペースを確保出来なくなってしまったり、地面からの衝撃を分散することが出来なくなってしまいます。 今回はその背骨のワークからスタートしましょう。 これは背骨をしなやかに動かしていきますが、背骨の特性として「頸椎(首の背骨)は繊細に動く」、「胸椎(肋骨の背骨)は動きにくい」、「腰椎(腰の背骨)はダイナミックに動く」というものがありますから、お腹が抜けてしまうと腰を痛める原因にもなるので、気をつけましょう。 そのため、トレーニングには「定番」なものもありますが、「何を・どの順番で・どのくらい行うか」は、ひとりひとり異なりますから、専門性や技術が高まって来たら、トレーニングは個別に指導を受けることをおすすめします。 そして背骨をしなやかに動かせるようになってきたら、そこに負荷をかけていきます。 腰部への負担を鑑みて、最近では「腹筋100回!」というような、腹筋さえあれば!というトレーニングや、精神論のトレーニングは減って来て、腹筋の力を借りながら、背骨を細やかにコントロールしていくワークをしていきましょう。 それによって手足の動きを邪魔しない胴体が出来るだけでなく、少しくらいバランスがずれてしまったとしても、リカバリー出来るコントロール力を身につけていくことが出来るのではないでしょうか? 次は一方に動かしていた背骨に立体的な動きを加えていきます。 バレエはポジションが決まっていますが、それは教科書に載っている絵のような平面的なものではなく、舞台という空間でより効果的に動けるためのものです。 力任せに引っ張るのではなく、背中と腕の関係や、それを支える腰周りの強さ、そして正しい立ち位置に導き、運動性を上げてくれる「ハムストリングス」への刺激、視線とバランスの関係…など、色々なポイントを確認することが出来ます。 最後の写真は、ストレッチ・ポールに乗ったままポール・ド・ブラをしたり、白鳥のアームスをしています。毎回これをご覧になった方が、皆さんびっくりされるのですが、これはそれほど難しくありません。 「足のケア」の投稿で「ウナ」や「ソマ」などのイラストを載せましたが、それらと、今までワークをしてきたことが組み合わされば、バランスを感じながら、楽に動くことが出来ますよ!(木村)
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こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 先日の「トレパック」の踊りは楽しく踊れましたか? 一言でロシア、と言ってもその国土は広く、様々な文化、言語、そして踊りが伝わっています。 みなとシティバレエ団附属のスクールで学ぶ生徒の皆さんの中に、クラシックバレエだけでなく、そのようなキャラクターダンスや、宮廷舞踊をもとにしたヒストリカルダンスにも、興味や関心を持つ人が増えてくれたら嬉しく思います。 それは、踊りを通じて、お互いの文化の一端を体験することで、たとえ言葉は通じなくとも、お互いを受けいれて、認め合えるようになるのではないかという希望でもあります。 そして自身が文化理解について努力するとともに、そこで得たものを土台にして、また他の人が芸術をはじめとした文化に触れる機会を提供するというお役目を果たせる人になっていけば、少しずつかもしれませんが「それぞれが<より良く在る>ために努力する」という「多様性」の実現にもつながるのではないでしょうか。 さて今回は「白鳥の湖」の作品紹介でもお伝えした「ナポリ」の踊りから、簡単なステップを3つ覚えて踊ってみましょう! もしお家に「白鳥の湖」の「ナポリ」の音楽があるようでしたら、後半のアップテンポになる部分からが踊りやすいかと思います。 まずひとつ目は「パー、ケン、パー、ケン」です。 バレエのポジションを知っている人は「跳んで2番、跳んでクペ、跳んで2番、跳んでクペ」を繰り返しましょう。 慣れてきたらクペの軸足側に軽く頭を倒してみたり、軸足側で手拍子をすると、よりリズム感が加わり見ている人にも楽しさが伝わります。 ふたつ目は「ジュテ・ソテ」です。 「ジュテ(jetes)」は「投げる、放る」の意味で、足を横(または前や後ろ)に出してから、もう片方の足で踏みきって跳び上がり、放った方の足で着地します。 クラシックではきちんと身体のセンターに着地する足が来ることが大切ですが、ここでは少し放る足に注目してもらうように、軽やかに跳びましょう。 そして最後は回転です。 とは言っても、片足でトントントンとリズムを踏みながら、軽く跳ねるようにして、少しずつ方向を変えていく(一般的には90°ずつ)感じなので、ピルエットのようにくるくると回転するものとは少し違いますね。 出来る人はアティテュードで回転してみましょう。遠心力がかかるので、お尻が出ないように注意です! これを組み合せてみると…
「2番、クペ、2番、クペ、2番、クペ、2番、クペ」 「トントントントン(1回で90°方向チェンジ)」 「ジュテ・ジュテ・ジュテ・ジュテ」 これで8カウント2回分の音楽の振り付けが出来ました! (カウントについては、また別の記事でお伝えしますね。) どうぞ楽しんで踊ってみてくださいね! おまけ:昔のイタリアでは「毒グモに噛まれたら、解毒するために踊る」という不思議な治療法があったとか…今でもその踊りは「タランテラ」として残っています。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 これまでご紹介してまいりました「身体遊び」から、少し進んで、ストレッチやコントロールについて数回に分けてお伝えしていこうと思いますので、ぜひ皆さんもこつこつと続けてみてくださいね。 今回はお家で出来るトレーニングのご紹介です。 まずは自分の身長に合う椅子を用意します。 ここで余談ですが、皆さんは自分の身体に合った椅子を使っていますか? 足がぶらぶらしていたり、座面にお尻が沈みすぎたり、背もたれが遠いままにしていては、子どもの筋力では姿勢を保持することが難しく、姿勢が保持出来ないがゆえに集中力が保てなかったり、逆に姿勢を保持しようと身体を無理に力ませてしまう場合もありますから、今一度お家の椅子をチェックしてみてください。 そしてもし足がぶらぶらしてしまう場合は足の下に台を置く、背もたれが遠い場合はクッションを入れる…など、ひと工夫をしてきちんと座れるようにしましょう。 椅子に座る際に気を付けるのは「骨盤」、特に「坐骨」です。 坐骨は体操座りをすると、床に当たってゴリゴリする骨ですがこれは骨盤の一部分で、坐骨が正しく座面や床をとらえられているということは、骨盤の在り方が正しいことの目安となります。 そして骨盤が直接当たっている「座位」の状態で、骨盤の在り方や、そこからつながる背骨や頭骨までの並び方を覚えることで、「立位」に進んだ時にも、より良く立つことが出来るようになります。 逆を言えば、手足の形や「バレエらしいポーズ」にとらわれ過ぎてしまうと、骨の位置や並び方に良くない影響が出てしまいますし、またそれを力任せに「矯正」しようとすると、ますます動きにくく、美しくない状態になり、けがにつながる場合もあるので、地味な作業ですが、きちんと骨盤の確認をするようにしましょう。 安定して座ることが出来たら、首を傾げてみたり、横を向いてみたりしてみましょう。 無理なく、そして肩や骨盤がずれることなく、頭を動かすことが出来たら、背骨にフォーカスして縦、横、斜めに動かしてみても骨盤が安定していられるかどうか、など試してみてください。 ここで大切なことは「安定」は「固定」ではないということです。
安定とはどのように動いても、もとの姿に戻って来られるしなやかな強さのことであり、固定はそこを離れたらその役割やはたらきが出来なくなってしまうものです。 骨盤を土台にした上半身、特に胴体の安定感を得ることで、スムーズな脚の動きが向上していきますから、少しずつトレーニングをしていきましょうね。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 自分が「先生」という肩書きをいただいた日に、自分の師から言われた言葉があります。 「バレエを教えるだけなら、誰でも出来る。人を育てることが出来るようにならなければならない。」 これまでもお伝えしてきたように、バレエはその形が整ってから400年以上もの間、(医学や科学の発達によりテクニックなどの強度や、上演の技術は向上してきましたが)求められる美しさや目指す正解、いわゆる「バレエのイデア」は大切に守られてきました。 ですから、個人的な感性としての「好きか嫌いか」についての自由はありますが、「美しいか、美しくないか」、「正しいか、正しくないか」、「良いか、良くないか」がはっきりしていますし、だからこそ「バレエを教えるだけなら、誰でも出来る」と言われるのかもしれません。 もちろんその「バレエのイデア」は簡単に手に入るものではありませんし、それを他の人に伝えて、正確に実施してもらうこともとても難しいものです。 また「先生」と言う肩書きをいただいている以上、「バレエの世界で<先に生きている>人」として、常に自身の在り方に(良い意味での)疑いの目を向けて、「より良い」指導を手渡せているかどうかを見つめていなければなりません。 今回の記事では、その一回り外側の「子どもクラスと大人クラス」をどのようにとらえているかを、少しだけお話してまいります。 木村はバレエをお料理に例えることが多いのですが(以前にもオムレツのたとえ話をしたことがありますね)、これもお料理のお話でお伝えしたいと思います。 まずは大人の方にバレエを手渡す時ですが、大人の方にはそれまでの体験してきたことや、感じたこと、学んだこと、知っていること等が心身に積み重なっていて、それはその方のアイデンティティでもありますから、それらを大切にしていくことを念頭においています。 それはたとえば、木村が「オムレツを作る際には、たまご2個に対して、加えるミルクは50ccが美味しい」と思っていても、「70ccの方がフワッとする」と感じる方もいらっしゃいます。 また、「○○を少しだけ入れる」とか、泡立て方などについて、木村のまだ試したことのない方法を知っている方もいらっしゃいます。 そのような相手に頭ごなしに「木村のオムレツの作り方」を押し付けても、お互いに良い気持ちがしない上に、「より美味しいオムレツ」の可能性は消されてしまいます。 それらをふまえた上で、改めて共有すべきは「なぜより美味しいオムレツを作るのか?」ということです。 それは「お料理を召し上がる方に<美味しい>と思っていただきたい」から、ということになりますね。 バレエにあっては、そのために専門家である「先生」は、自分の中にある知識や経験をフル稼働させて、より良いクラスやワークを手渡しますし、生徒の皆さんにはそれらにトライしつつ、「先生」を刺激するような「何か」をさらに共有しながら、より良いバレエに手を伸ばして行ければと思います。 一方、子どもたちにバレエを手渡す場合には、体験や知識の部分への書き込みが少ないからこそ、「先生のバレエ」がどれだけ影響力を持つかをしっかり自覚して、クラスを行うことを心がけています。 先に書いたように、常に自身の指導方法や内容、また声掛けの仕方や、修正する際の手の触れ方にいたるまで、振り返り、最適化出来るように気を配るのです。 これはお料理で言えば、はじめて食べるオムレツが美しくなくて、化学調味料だらけで、盛り付け方も雑で、そしてそもそも美味しくなければ、「オムレツとはそういうもの」という書き込みがされてしまい、その人の「オムレツのイデア」は、その後ずっと「良くないもの」として定着して、もしそれを他の誰かに伝えるようなことがあれば、正しくない「オムレツのイデア」がひろまってしまうことになるのです。 これは、味覚やバレエだけでなく、立ち居振る舞いや、ものの考え方など、その人の「生き方」にも大きな影響を及ぼしますから、時間がかかってでも、手間がかかってでも、より良いイデアを手渡したいものですね。
おまけ:こちらの写真は木村がクラスを担当させていただいているお稽古場の一部です。ありがたいことにたくさんのご縁をいただいておりますが、今春からさらに加わった池上バレエスクールも含めて、今まで以上にしっかりと「より良いバレエのイデア」をレッスンで共有していければと思っております。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 まずはこちらの写真をご覧ください。 これをバレエ用語で説明すると、次のようになります。
「1stポジションのドゥミ・プリエ、右手をア・ラ・セゴンから横にカンブレ、右足を横にタンデュ、最後にドゥミ・プリエ」 声に出して読んでもわずか12秒ですし、この動きに合うレッスン曲(ゆったりとしたプリエの音楽)で実施しても60秒もあれば十分に足ります。 これを子どもたちに伝える時に、木村は200秒ちかく、つまり3分以上かけます。 びっくりする方もいらっしゃるかもしれませんね。 以前に「お手伝いのすすめ」でお話したように、子どもたちの情報の受容出来る量や範囲はかなり限られていますし、またその受容した情報を取捨選択する段取りも未発達です。 そのため、まずは実施する速度の2倍程度の時間をかけて、動きを視覚でとらえることに集中して覚えます。 次に、先に示したような「言葉での説明」を加えながら動きを整頓していきます。 その次に、今度は先生は動かずに、子どもたちが順番を「言葉で説明」していきます。 その際も、全てを言うのではなくて、先生との問答のように「次は何をどうする?」「右足を横にタンデュする」「何回かな?」「1回!」…と確認していき、そこでようやく音楽がスタートするのです。 バレエでは特に、身体の各パートに関する感覚、方向感覚、空間認知感覚は、子どもたちの「動けること」と平行して、きちんと整頓をしていく必要があります。 それは「回れるけれど行き当たりばったりな感じがする」、「跳べるけれどポジションがばらばら」、「脚はあがるけれど身体がつられてぐらぐら」…では、どのような時にも立ち居振る舞いの奥に必ず品格を含ませることを大切にしている「バレエ」からは離れていってしまうからです。 また、ポジションが正確なだけでは「私・昨日・行く・遊園地・乗る・ジェットコースター・楽しい」と話す感じで、どれだけその単語ひとつひとつを正確に発音出来ても、文章になっていませんし、相手にはその言葉しか伝わりません。 「私は昨日、遊園地に行って、ジェットコースターに乗りました。とても楽しかったです!」と伝えるには、以前の記事でもお話したように、たとえレッスンのムーブメントであっても「おしゃべりをするようにバレエを」することを心がけることが大切なのです。 お話をする時に緩急や強弱がつくように、シンプルに見えるバレエのレッスンでも、そのムーブメントの流れは単調なものではありません。 そしてそれを導くためにレッスン音楽があり、先生たちはいつでも丁寧に数あるレッスン曲の中から、動きと目的、そしてニュアンスなどがきちんと伝わり、子どもたちがそれらを身に付けられるように工夫しているのです。 もしそうでなければ、単純にポジションだけを覚えるのであれば、音楽はもはや「いらないもの」になってしまいますし、メトロノームでレッスンしても変わらない…というものになってしまうでしょう。 「そんなにじっくり伝えていたら、子どもたちは飽きてしまうのではないですか?」と聞かれることがありますが、今まで担当してきた生徒さんの中では、そのようなお子さんはいませんでした。 子どもたちの「やる気スイッチ」がうまく入り、「集中力のギア」が入れば、大人の心配は杞憂に変わるのかもしれませんね。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 いよいよ6月となりましたね。 梅雨入りまでのしばらくの間、初夏の爽やかなお天気を存分に楽しみたいものです。 ただ、この時期の日差しに含まれる紫外線は(太陽の高さの関係から)実は夏よりも多いので、紫外線対策をきちんとして、また食事や睡眠などの体調管理を心がけて、身体に余計なダメージを残さないようにしましょう。 さて、昔から日本では「6才の6月6日に稽古事を始めると上達する」ということが言われてきました。 これは能の世阿弥(ぜあみ)という方の記した『風姿花伝(ふうしかでん)』という本に、次のように書かれていることから、そのように考えられているようです。 習い事は数え年7才頃から始めるのが良い。 この頃の稽古は子どもたちが自然に行うことの中に生まれ持った美点が見えてくる。 舞いやその所作などにぎこちないところがあっても、子どもたちが何気なくやり始めたら、まずはその子の心のままに、やりたいようにやらせてみることが大切。 さらに世阿弥は次のように語ります。 あまりに細かく、これは良い、これは悪い、と教えすぎたり、注意し過ぎてしまっては、子どもたちもやる気を失い、子どもたちの脳が止まってしまうだろう。 さらに言えば、子どもたちにはもっぱら基本動作以外の練習をさせるべきではなく、舞台で演じる時は、子どもたちにふさわしい場面で、子どもたちの得意なこと(演目)をさせる方が良い。 込み入った物まねは、たとえ子どもたちが出来たとしても、教えるべきではない。 世阿弥が生きたのは室町時代ですから、ちょうどバレエがパフォーマンスとしてその形をまとめ始めた頃ですね。国が違っても、パフォーマンスのジャンルが違っても、人々の芸術や芸事に取り組む情熱は変わらないようです。 スケジュールの関係で「6月6日」とはいきませんが、みなとシティバレエ団附属池上バレエスクールでは、6月11日(土)に、イベント付きのレッスン体験会を開催いたします。 30分の短いレッスン体験と、バレエ衣裳の試着とお写真が撮影出来る「フォトタイム」を予定しておりますので、ぜひ池上校スタジオへ足をお運びくださいませ。 またすでに6月4日(土)にも、通常レッスンへの体験のお申し込みをいただいております。
何かを始める時には、わくわく感よりも、緊張と不安が大きいかと思いますが、ぜひ一度レッスンを体験していただき、ご不明点や疑問点などもお問い合わせいただければと思います。 おまけ:体験レッスン当日は動きやすい服装(Tシャツ、スパッツ、短い靴下など)でお越しください。髪の毛の長いお子さまは、髪の毛がお顔にかからないようにまとめておいていただければと思います。またご希望の方は、事前の申し込みで、写真のようなレオタードを貸出しすることも出来ますので、お気軽にご相談ください。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 先日の「トレパック」の踊りは楽しく踊れましたか? 一言でロシア、と言ってもその国土は広く、様々な文化、言語、そして踊りが伝わっています。 みなとシティバレエ団附属のスクールで学ぶ生徒の皆さんの中に、クラシックバレエだけでなく、そのようなキャラクターダンスや、宮廷舞踊をもとにしたヒストリカルダンスにも、興味や関心を持つ人が増えてくれたら嬉しく思います。 それは、踊りを通じて、お互いの文化の一端を体験することで、たとえ言葉は通じなくとも、お互いを受けいれて、認め合えるようになるのではないかという希望でもあります。 そして自身が文化理解について努力するとともに、そこで得たものを土台にして、また他の人が芸術をはじめとした文化に触れる機会を提供するというお役目を果たせる人になっていけば、少しずつかもしれませんが「それぞれが<より良く在る>ために努力する」という「多様性」の実現にもつながるのではないでしょうか。 さて今回は「白鳥の湖」の作品紹介でもお伝えした「ナポリ」の踊りから、簡単なステップを3つ覚えて踊ってみましょう! もしお家に「白鳥の湖」の「ナポリ」の音楽があるようでしたら、後半のアップテンポになる部分からが踊りやすいかと思います。 まずひとつ目は「パー、ケン、パー、ケン」です。 バレエのポジションを知っている人は「跳んで2番、跳んでクペ、跳んで2番、跳んでクペ」を繰り返しましょう。 慣れてきたらクペの軸足側に軽く頭を倒してみたり、軸足側で手拍子をすると、よりリズム感が加わり見ている人にも楽しさが伝わります。 ふたつ目は「ジュテ・ソテ」です。 「ジュテ(jetes)」は「投げる、放る」の意味で、足を横(または前や後ろ)に出してから、もう片方の足で踏みきって跳び上がり、放った方の足で着地します。 クラシックではきちんと身体のセンターに着地する足が来ることが大切ですが、ここでは少し放る足に注目してもらうように、軽やかに跳びましょう。 そして最後は回転です。 とは言っても、片足でトントントンとリズムを踏みながら、軽く跳ねるようにして、少しずつ方向を変えていく(一般的には90°ずつ)感じなので、ピルエットのようにくるくると回転するものとは少し違いますね。 出来る人はアティテュードで回転してみましょう。遠心力がかかるので、お尻が出ないように注意です! これを組み合せてみると…
「2番、クペ、2番、クペ、2番、クペ、2番、クペ」 「トントントントン(1回で90°方向チェンジ)」 「ジュテ・ジュテ・ジュテ・ジュテ」 これで8カウント2回分の音楽の振り付けが出来ました! (カウントについては、また別の記事でお伝えしますね。) どうぞ楽しんで踊ってみてくださいね! おまけ:昔のイタリアでは「毒グモに噛まれたら、解毒するために踊る」という不思議な治療法があったとか…今でもその踊りは「タランテラ」として残っています。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 これまでご紹介してまいりました「身体遊び」から、少し進んで、ストレッチやコントロールについて数回に分けてお伝えしていこうと思いますので、ぜひ皆さんもこつこつと続けてみてくださいね。 今回はお家で出来るトレーニングのご紹介です。 まずは自分の身長に合う椅子を用意します。 ここで余談ですが、皆さんは自分の身体に合った椅子を使っていますか? 足がぶらぶらしていたり、座面にお尻が沈みすぎたり、背もたれが遠いままにしていては、子どもの筋力では姿勢を保持することが難しく、姿勢が保持出来ないがゆえに集中力が保てなかったり、逆に姿勢を保持しようと身体を無理に力ませてしまう場合もありますから、今一度お家の椅子をチェックしてみてください。 そしてもし足がぶらぶらしてしまう場合は足の下に台を置く、背もたれが遠い場合はクッションを入れる…など、ひと工夫をしてきちんと座れるようにしましょう。 椅子に座る際に気を付けるのは「骨盤」、特に「坐骨」です。 坐骨は体操座りをすると、床に当たってゴリゴリする骨ですがこれは骨盤の一部分で、坐骨が正しく座面や床をとらえられているということは、骨盤の在り方が正しいことの目安となります。 そして骨盤が直接当たっている「座位」の状態で、骨盤の在り方や、そこからつながる背骨や頭骨までの並び方を覚えることで、「立位」に進んだ時にも、より良く立つことが出来るようになります。 逆を言えば、手足の形や「バレエらしいポーズ」にとらわれ過ぎてしまうと、骨の位置や並び方に良くない影響が出てしまいますし、またそれを力任せに「矯正」しようとすると、ますます動きにくく、美しくない状態になり、けがにつながる場合もあるので、地味な作業ですが、きちんと骨盤の確認をするようにしましょう。 安定して座ることが出来たら、首を傾げてみたり、横を向いてみたりしてみましょう。 無理なく、そして肩や骨盤がずれることなく、頭を動かすことが出来たら、背骨にフォーカスして縦、横、斜めに動かしてみても骨盤が安定していられるかどうか、など試してみてください。 ここで大切なことは「安定」は「固定」ではないということです。
安定とはどのように動いても、もとの姿に戻って来られるしなやかな強さのことであり、固定はそこを離れたらその役割やはたらきが出来なくなってしまうものです。 骨盤を土台にした上半身、特に胴体の安定感を得ることで、スムーズな脚の動きが向上していきますから、少しずつトレーニングをしていきましょうね。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 自分が「先生」という肩書きをいただいた日に、自分の師から言われた言葉があります。 「バレエを教えるだけなら、誰でも出来る。人を育てることが出来るようにならなければならない。」 これまでもお伝えしてきたように、バレエはその形が整ってから400年以上もの間、(医学や科学の発達によりテクニックなどの強度や、上演の技術は向上してきましたが)求められる美しさや目指す正解、いわゆる「バレエのイデア」は大切に守られてきました。 ですから、個人的な感性としての「好きか嫌いか」についての自由はありますが、「美しいか、美しくないか」、「正しいか、正しくないか」、「良いか、良くないか」がはっきりしていますし、だからこそ「バレエを教えるだけなら、誰でも出来る」と言われるのかもしれません。 もちろんその「バレエのイデア」は簡単に手に入るものではありませんし、それを他の人に伝えて、正確に実施してもらうこともとても難しいものです。 また「先生」と言う肩書きをいただいている以上、「バレエの世界で<先に生きている>人」として、常に自身の在り方に(良い意味での)疑いの目を向けて、「より良い」指導を手渡せているかどうかを見つめていなければなりません。 今回の記事では、その一回り外側の「子どもクラスと大人クラス」をどのようにとらえているかを、少しだけお話してまいります。 木村はバレエをお料理に例えることが多いのですが(以前にもオムレツのたとえ話をしたことがありますね)、これもお料理のお話でお伝えしたいと思います。 まずは大人の方にバレエを手渡す時ですが、大人の方にはそれまでの体験してきたことや、感じたこと、学んだこと、知っていること等が心身に積み重なっていて、それはその方のアイデンティティでもありますから、それらを大切にしていくことを念頭においています。 それはたとえば、木村が「オムレツを作る際には、たまご2個に対して、加えるミルクは50ccが美味しい」と思っていても、「70ccの方がフワッとする」と感じる方もいらっしゃいます。 また、「○○を少しだけ入れる」とか、泡立て方などについて、木村のまだ試したことのない方法を知っている方もいらっしゃいます。 そのような相手に頭ごなしに「木村のオムレツの作り方」を押し付けても、お互いに良い気持ちがしない上に、「より美味しいオムレツ」の可能性は消されてしまいます。 それらをふまえた上で、改めて共有すべきは「なぜより美味しいオムレツを作るのか?」ということです。 それは「お料理を召し上がる方に<美味しい>と思っていただきたい」から、ということになりますね。 バレエにあっては、そのために専門家である「先生」は、自分の中にある知識や経験をフル稼働させて、より良いクラスやワークを手渡しますし、生徒の皆さんにはそれらにトライしつつ、「先生」を刺激するような「何か」をさらに共有しながら、より良いバレエに手を伸ばして行ければと思います。 一方、子どもたちにバレエを手渡す場合には、体験や知識の部分への書き込みが少ないからこそ、「先生のバレエ」がどれだけ影響力を持つかをしっかり自覚して、クラスを行うことを心がけています。 先に書いたように、常に自身の指導方法や内容、また声掛けの仕方や、修正する際の手の触れ方にいたるまで、振り返り、最適化出来るように気を配るのです。 これはお料理で言えば、はじめて食べるオムレツが美しくなくて、化学調味料だらけで、盛り付け方も雑で、そしてそもそも美味しくなければ、「オムレツとはそういうもの」という書き込みがされてしまい、その人の「オムレツのイデア」は、その後ずっと「良くないもの」として定着して、もしそれを他の誰かに伝えるようなことがあれば、正しくない「オムレツのイデア」がひろまってしまうことになるのです。 これは、味覚やバレエだけでなく、立ち居振る舞いや、ものの考え方など、その人の「生き方」にも大きな影響を及ぼしますから、時間がかかってでも、手間がかかってでも、より良いイデアを手渡したいものですね。
おまけ:こちらの写真は木村がクラスを担当させていただいているお稽古場の一部です。ありがたいことにたくさんのご縁をいただいておりますが、今春からさらに加わった池上バレエスクールも含めて、今まで以上にしっかりと「より良いバレエのイデア」をレッスンで共有していければと思っております。(木村) こんにちは、池上校講師の木村美那子です。 まずはこちらの写真をご覧ください。 これをバレエ用語で説明すると、次のようになります。
「1stポジションのドゥミ・プリエ、右手をア・ラ・セゴンから横にカンブレ、右足を横にタンデュ、最後にドゥミ・プリエ」 声に出して読んでもわずか12秒ですし、この動きに合うレッスン曲(ゆったりとしたプリエの音楽)で実施しても60秒もあれば十分に足ります。 これを子どもたちに伝える時に、木村は200秒ちかく、つまり3分以上かけます。 びっくりする方もいらっしゃるかもしれませんね。 以前に「お手伝いのすすめ」でお話したように、子どもたちの情報の受容出来る量や範囲はかなり限られていますし、またその受容した情報を取捨選択する段取りも未発達です。 そのため、まずは実施する速度の2倍程度の時間をかけて、動きを視覚でとらえることに集中して覚えます。 次に、先に示したような「言葉での説明」を加えながら動きを整頓していきます。 その次に、今度は先生は動かずに、子どもたちが順番を「言葉で説明」していきます。 その際も、全てを言うのではなくて、先生との問答のように「次は何をどうする?」「右足を横にタンデュする」「何回かな?」「1回!」…と確認していき、そこでようやく音楽がスタートするのです。 バレエでは特に、身体の各パートに関する感覚、方向感覚、空間認知感覚は、子どもたちの「動けること」と平行して、きちんと整頓をしていく必要があります。 それは「回れるけれど行き当たりばったりな感じがする」、「跳べるけれどポジションがばらばら」、「脚はあがるけれど身体がつられてぐらぐら」…では、どのような時にも立ち居振る舞いの奥に必ず品格を含ませることを大切にしている「バレエ」からは離れていってしまうからです。 また、ポジションが正確なだけでは「私・昨日・行く・遊園地・乗る・ジェットコースター・楽しい」と話す感じで、どれだけその単語ひとつひとつを正確に発音出来ても、文章になっていませんし、相手にはその言葉しか伝わりません。 「私は昨日、遊園地に行って、ジェットコースターに乗りました。とても楽しかったです!」と伝えるには、以前の記事でもお話したように、たとえレッスンのムーブメントであっても「おしゃべりをするようにバレエを」することを心がけることが大切なのです。 お話をする時に緩急や強弱がつくように、シンプルに見えるバレエのレッスンでも、そのムーブメントの流れは単調なものではありません。 そしてそれを導くためにレッスン音楽があり、先生たちはいつでも丁寧に数あるレッスン曲の中から、動きと目的、そしてニュアンスなどがきちんと伝わり、子どもたちがそれらを身に付けられるように工夫しているのです。 もしそうでなければ、単純にポジションだけを覚えるのであれば、音楽はもはや「いらないもの」になってしまいますし、メトロノームでレッスンしても変わらない…というものになってしまうでしょう。 「そんなにじっくり伝えていたら、子どもたちは飽きてしまうのではないですか?」と聞かれることがありますが、今まで担当してきた生徒さんの中では、そのようなお子さんはいませんでした。 子どもたちの「やる気スイッチ」がうまく入り、「集中力のギア」が入れば、大人の心配は杞憂に変わるのかもしれませんね。(木村) |